[山田厚俊]【自民党ダッチロールの始まり】~安倍首相、夏前退陣の声も~
山田厚俊(ジャーナリスト)
「山田厚俊の永田町ミザルイワザルキカザル」
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「“王手飛車角”の勝負手だな。これで詰みだ。」
2月25日夕、自民党関係者は力なくこう語った。
西川公也前農水相が23日に辞任。2006年に発足した第1次安倍政権では、松岡勝利農相(当時)が事務所費問題で自殺し、後任の赤城徳彦農相(同)にも事務所費問題が浮上し、絆創膏騒動で辞任した。いわゆる“辞任ドミノ”の引き金にもなった農相ポスト。安倍首相にとって鬼門なのである。
嫌な予感があったのかもしれない。今年早々、自民党内では昨年と明らかに違った雰囲気が漂っていた。中堅衆院議員やベテラン秘書たちに話を聞くと、驚くほどに弱気なのだ。
「こんなに安倍さんは前のめりになっていいのか。もし、(内閣が)倒れた場合、自民党は再び下野するどころか、崩壊の危機に立たされてしまうのではないか。」
余裕の安定多数を確保したにもかかわらず、経済の立て直しをしっかりやればいいものを安保法制に改正をはじめとした“お得意分野”に傾注する安倍首相に不安を隠さない議員や秘書がこう口にしていたのだ。
国会論戦でも安倍首相はトップリーダーらしからぬヤジを飛ばし、自民党内からも白けたため息が漏れ伝わってくる。そんな矢先の西川氏の辞任だった。
加えて、26日発売の『週刊文春』が、下村博文文科相について“無届け後援会”で政治資金規正法の疑いがあるとスクープ記事を掲載した。冒頭の自民党関係者は、その“早刷り記事”のコピーを見て、愕然として漏らした一言である。
下村氏は、安倍首相の盟友の一人。そう簡単に辞任とはならないだろうが、喉元に刺さった小骨はじわじわと内閣全体を蝕む。別の自民党関係者は語る。
「夏前に、安倍首相退陣するかもしれない。そうなれば、谷垣禎一幹事長が就いて、選挙管理内閣になるだろう。来夏の参院選に合わせて衆参ダブルだ。」
またもや、自民党ダッチロール現象の始まりかもしれない。