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.国際  投稿日:2013/11/29

[島津衛]中国軍の実力を分析する②〜中国の狙いと戦略[現役自衛官の国防・軍事ノート]


gazou151

ペンネーム・島津 衛(防衛大学校卒、現役自衛官)

執筆記事

①(資料から見る戦力)を読む

 

[中国軍の狙いは何か]

わが国に影響を及ぼす中国の軍事行動はいろいろ考えられる。その狙いは、

  1. 米国の関与・手出しの防止
  2. 尖閣諸島の占拠
  3. わが国に対する外交的優越の獲得

が考えられる。中国の一部の論調には沖縄本島も含め中国領であるという主張もあることから、将来的にはそこまで主張する可能性もあるだろう。

②、③についてはよく言われていることであるためここでは改めて触れないが、①は重要だ。中国は1995~96年の台湾海峡ミサイル危機において米国に苦汁を舐めさせられたという意識があり、いかに米国に口出しさせないかということを考えている。A2ADと言われる「接近阻止・領域拒否(Anti-Access/Area Denial)」が注目されるが、その考え方の先に「米本土への核による威嚇」がある。これをもって米国への抑止が完成するのだろう。

すでに、対艦弾道ミサイル等による接近阻止の能力は保持しつつあると言えるが、現在開発中の潜水艦発射型ミサイルJL-2 は射程が8,000㎞と言われ、わが国の沖ノ鳥島近海まで進出すると米国本土が射程内に入る。最近、中国海軍が沖縄近海を抜け、沖ノ鳥島周辺で活発に活動しているのはこういったことが背景にあるとみられる。

潜水艦は南シナ海にその拠点があり、西太平洋に進出することが不可欠だとすると、わが国の領土や海上自衛隊、米海軍・海兵隊の存在が邪魔になる。地政学的にも、海洋進出のチョークポイントは台湾とわが国の南西諸島だ。南シナ海は、中国自身のシーレーンや海軍の主力基地があり、南シナ海そのものの支配を狙いとしているが、わが国周辺に関しては、いかにして西太平洋へ進出するかという観点から、行動範囲の拡大を図っている。

おそらく近い将来、先島諸島や沖縄本島の領有を主張したり西太平洋で頻繁に軍事演習を行ったりするようになると考えられる。

[弱点はあるのだろうか]

中国軍は十分な軍事費をもってその近代化を図っており、わが国としても看過できない状況になっている。とりわけ戦力比だけを見ると大変厳しい。ただし、装備先行の感は否めず、空母など実戦での運用となると練度が低い部分も多い。ただ、すでに米国の予想を超える速さで空母への発着艦を行ったとされ、運用能力も急速に高まっている。

しかし、兵士の士気は高くないと言われている。一人っ子政策で甘やかされた子供たちが兵士となり、組織のために身を挺するという軍隊の本質ができず、部隊としての戦力が十分に発揮できる状態にないという話も聞く。

[中国軍とどう向きあうか]

かつては中国軍は規模ばかりが大きく「恐れるに足らず」とも言われたが、近年急速に「質」の改善がなされていることに注目しておかなければならない。とくに、現代戦で求められる新たな領域・特殊な分野に関する能力や攻撃力がわが国に比べて急速に向上していることから、日本として憂慮すべき軍隊であることは間違いない。

しかし、軍拡競争を行って敵う相手ではないし、そのようなことを行ってアジア・太平洋地域の安定・平和が保てるとも思えない。重要なことは、「最後まで国家と国民・領土を守る」という国民全体の強い意志と情勢に応じた適切な軍事力を保持することである。

中国軍のある軍人は「中国は、軍事的に防御的である。したがって、軍をもって政治的利益やイデオロギーを他国に押し付けることはない。米国のようにそれらを他国へ押し付け、他国の領土を宣戦布告もなしに奪うことはない」と言った。軍事力に不均衡が生じれば「野心」も生まれるかもしれないが、中国軍には中国軍としての「正義」がある。

立場が違うために正義と正義がぶつかることは不幸だ。そういった不幸な状態が生じないよう、軍事力の均衡を保ちつつ、政治・軍事両面での相互理解を深めることが必要だと思う。

①(資料から見る戦力)を読む

 

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