2017総選挙ファクトチェックプロジェクト
政治  投稿日:2013/12/16

[清谷信一]低性能でも価格は数倍から10倍の国産小火器〜住友重機が防衛省に納入していた機関銃データの改竄も露呈

Pocket

清谷信一(軍事ジャーナリスト)

執筆記事プロフィールWebsiteTwitter

 

先週朝日新聞、読売新聞の両紙は住友重機械工業が防衛省に納入しているMINIMI(ミニミ軽機関銃)などの機関銃の、耐久性などの検査データを改竄し、要求を満たない製品を10年以上にわたって納入していたと報道した。

  [朝日新聞]機関銃の試験データを改ざん、防衛省に納入 住友重機

  [読売新聞]機関銃検査データ改ざん、住友重機が防衛省納入

住友重機は7.62ミリの62式機関銃、7.62ミリ74式機関銃、5.56ミリMINIMI、12.7ミリM2重機関銃などの機関銃を生産している。MINIMIとM2はライセンス品だ。国産の62式機関銃は連射が出来ない、バーツがバラバラと落ちるなど、評判は最悪である。74式はこれを車載型にしたものだ。MINIMIやM2は外国製のライセンス品だが、オリジナルに較べて故障や不具合が多いことは現場の隊員からよく聞いていた。今回の件はこれらを裏付けることとなった。

国内メーカーの小火器は一般に品質・性能に劣り、値段は海外製の数倍から10倍以上と極端に高額になっている。コストパフォーマンスは極めて劣悪だ。ところがこの現状が放置されてきている。その最大の原因は、輸出ができないために自衛隊の小火器は拳銃がミネベア社、小銃や迫撃砲、グレネードランチャーなどが豊和工業、機関銃が住友重機などと住み分けがなされている(より大きい機関砲や火砲は日本製鋼所)。

輸出ができないために顧客はほとんどが防衛省(それと警察や海保)などの国内の官需のみだ。少ない国内市場の中で住み分けを行っているため生産量が少なく、細々と生産を行っている。だから単価が高騰する。豊和工業が旧型の64式小銃の後継として開発・生産した89式小銃は国際的にみて及第点をとっているとされているが、単価は米国のM-16の6倍程度だ。このため採用から四半世紀たった現在までも64式の更新が完了していない。

二種類の小銃が存在することは、2種類の弾薬とパーツ、訓練が必要であることを意味する。消耗パーツなどの量産効果がでないことは当然だが、兵站、訓練のコストも割高になる。最も大きな問題が有事の損耗補充だ。89式小銃に慣れた隊員が64式を渡されても使いこなせない。逆も同じだ。だから本来銃の更新はできるだけ早く行う必要がある。

ミネベア社が開発した機関拳銃は空挺部隊用に開発されたが、設計思想が70年は遅れており、20メートル先でも命中が覚束ないガラクタだが、値段は他国の同等品の10倍以上もする(これについては機会をみて詳細を書く予定だ)。本来他国のように89式小銃の銃身を短くしたカービンを採用すればよかったのに、ミネベア社に仕事をふる必要があったのだろう。だが、こんな欠陥兵器を押し付けられる現場の隊員はたまったものではない。

同じ分野で複数のメーカーが競合もせずに、存在していることの弊害としては弾道工学や素材などの基礎研究は同じなのに、それを各社で重複して行っていることだ。つまり国内の少ない研究開発費が分散されている。これではまともな基礎研究ができるはずがない。

生産量が少ないので利益も少ない。当然設備投資や従業員の訓練、新型銃器の開発費用も少なくなる。最新の生産設備など導入できない。また一人の設計者が新型を開発する機会は生涯に1回あるかないかで、開発者の経験も少ない。これで世界に伍せる装備の開発ができるだろうか。

唯でさえ少ない防衛予算を喰い潰しているといって良い状態だ。他国では国際兵器市場の競争の激化で銃器メーカーの統合が行われているが、我が国では無風状態できた。これは国産調達が是とされてきたからだ。だが装備調達予算は人件費や装備の修理維持費の口頭で年々減っている。コストと面からこのようなデタラメな調達はもはや限界だ。また性能的や品質の問題もある。

 

gazou224

 

諸外国では拳銃から大砲まで一社が生産している例は少なくない。我が国でも火器メーカーは集約すべきだ。現状は各社にまんべんなく仕事が切れないように割り振ろうとするから、生産期間が非常識に長くなり、細々と生産することになり、これがコストの高騰の最大の原因となっている。

メーカーを統合すれば例えば5年間は機関銃を集中的に生産し、次の5年間は小銃を生産するなどして量産が可能となり、調達コストが大幅に下がる。また国内で生産が難しいものは輸入に切り替えるべきだ。輸入だと戦時の増産や入手ができないという意見があるが、これは迷信の類だ。

現状メーカー各社は綱渡りで最小限の生産設備と人員を維持している。戦時に量産などできない。むしろ米軍や他国と同じものを使用していれば、戦時に外国から速やかに調達できる。また一定以上の予備や予備部品をストックしておけば良い。例えば一丁30万円の小銃を国内生産するではなく、一丁6万円の小銃を輸入し、併せて一丁の予備銃、二丁分の消耗部品を輸入しても現状の半額以下であり、より戦時に多量の火器と予備部品の投入が可能となる。

小火器メーカーの再編・統合は自衛隊の装備調達改革で避けて通れない問題だ。

 

【あわせて読みたい】

タグ清谷信一
Pocket

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."