[角谷浩一]政界も舌を巻く“非議員・元首相”小泉純一郎の求心力〜原発ゼロ・日中関係・靖国問題・尖閣問題・日米関係へも言及する発信力
角谷浩一(政治ジャーナリスト・映画評論家)
12日に行われた日本記者クラブでの元首相・小泉純一郎の講演は今年最高の350人が詰めかける盛況となった。その受付もほんの半日でいっぱいになるほどの人気で、小泉の発信力の高さと求心力に政界は改めて舌を巻いた。
ただ、自民党執行部は苦々しい。首相・安倍晋三にとっては師匠格だが、引退した非議員であり、発言を制限することもできない。当面は「反論はメディアを喜ばせるだけ」(党政調会長・高市早苗)と静観の構えだが、それではますます世論が小泉支持を強めるだけと頭を悩ませる。当日の小泉発言は原発ゼロのほか、日中関係、靖国問題、尖閣問題、日米関係など多岐に渡った。
政界関係者が言う。
「原発ゼロをひとつのテーマにしたのは小泉の政治的勘だろう。ただ今回の講演では安倍政権への評価や政策についての感想が多く含まれている。ほめるところはほめている。冷静に聞けば政権へのエールでもあり、注文でもあるのではないか。小泉流の安倍政権の進むべき方向のずれの修正を行ったのではないか。政界は小泉発言の意味や裏読みに明け暮れるが、小泉としての政権1年を評価したつもりではないか」
と分析する。小泉はこのうねりを利用するのだろうか。それともしばらく発言を控えるのか。それによって本当の思惑が浮き彫りになるはずだ。
官邸関係者は、
「小泉発言は大変なインパクトだ。『小泉の提言を受けて』という形で何かできないかという議論が内部ではある。小泉を完全に無視してはいけない。どっちにしろ30年、40年先は原発ゼロになるのではないか。今後の原発新設はないだろう。となれば小泉とは時間軸の問題しかない。小泉のシグナルを受け止めないと」。
シグナルはちゃんと発信され、ちゃんと受け止められたのか。
【あわせて読みたい】
- 権力者から挑戦者へのイメージ変換戦略〜どうなる維新の会、どうする橋下徹大阪市長
- ポスト安倍もままならない政界の現状〜人材育成が急務
- 川崎市長選挙に見る順風満帆・安倍政権の見えない敗北
- なぜ、山本太郎参院議員は天皇陛下に直接“手紙”を渡したのか?〜公人によるメディアの危険な使い方
- 元首相・小泉純一郎『脱原発宣言』の波紋