[Japan In-depth 編集部]【“がん”=“不幸”と考えない生き方】~「幸せ」を考えるきっかけを与えてくれた“ギフト”~
考えさせられるドキュメンタリーの試写を見た。テーマは“がん”。これ迄のドキュメンタリーは、主人公の”死”をもって終わるものがほとんどだった。しかしこの番組は違った。テーマは“生きる”という事なのだ。
主人公は24才の時に乳がんを経験した報道記者の鈴木美穂さん。予期せぬ病にかかり奈落の底に突き落とされた彼女は、自らの運命を慨嘆し、取り乱す姿ありのまま、全て映像でさらけ出している。
その鈴木さんががんを告知され、絶望の淵で頭に浮かんだのは、「がんになったからこそ伝えられることがある」という思いだったという。彼女は、家族らに頼んで一挙手一投足すべてを映像に記録し始めた。病床にありながら一体何故そんな事を・・・と怪訝に思われる人もいるかもしれない。しかし、彼女は1人の患者であると同時に1人の記者でもあるのだ。記者とは見たままを伝えるのが仕事。同じ仕事をするものとして気持ちはわかる。わかるが、その強さに圧倒されるばかりだ。
とはいえ、不安にかられ、取り乱して泣き叫ぶ姿をドキュメンタリーという形で世に出す事に抵抗がなかったと言ったら嘘だろう。中には見せたくない姿もあったはずだ。それでもなお、その映像を躊躇なく世に問おう、というその覚悟。記者魂という一言ではとても片づけられない。
番組には、19歳の時に巨大な肝臓がんが見つかり摘出、余命半年宣言をされた山下弘子さんも登場する。がんは肺に転移、22歳になった今も治療を続けている彼女の放つメッセージはさらに強烈だ。講演の中で「がんになった今の方が幸せ」と言い切る山下さんは、今も治験を受けながら人生を謳歌している。
そんな山下さんが「幸せって何?」というシンプルな問いを投げかけるシーンがある。私たちはその問いに即答できるだろうか。彼女は念願のスキューバダイビングの免許を取りに沖縄を訪れる。初めて見る海中の世界。目にするものすべてに感動する山下さん。彼女は「幸せ」はそんなにたいそうなものではなくて、自分の周りに起きる日々の楽しい事、嬉しい事、感動した事など、どんなに小さくてもいい、それら一つ一つが幸せなんだ、と言う。大げさなことではない。普段の生活の中に幸せは潜んでいるんだということを気づかせてくれる。
“がん=不幸”と私たちは思い込みがちだが、病になったことで自らの生き方を見つめ直し、そして未来に向けて進むべき道を見つける人がこんなにもたくさんいる。2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで死亡するという日本。きょうも多くの人が病と向かい合って生きている。健康な時、人は自分の生を意識することはない。しかし、“がん”という予期せぬ病を経験してなお、それを「命」や「幸せ」を考えるきっかけを与えてくれた“ギフト=贈り物”としてとらえている人々の言葉は、私たちに「“生きる”意味を考えよ」、と問いかけている。
番組名:「Cancer gift(キャンサーギフト)がんって、不幸ですか?」
放送日:2015年7月4日(土)10:30~11:25(日本テレビ関東ローカル、放送終了後HPにて動画配信)
NOD(日テレオンデマンド:無料)
「Cancer gift(キャンサーギフト)がんって、不幸ですか?」予告 公開中~ 2015/7/4 11:25
YouTube 日テレ公式チャンネル 予告 公開中~ 2015/7/6
トップ画像:日本テレビ報道記者 鈴木美穂さん ⓒ日本テレビ