ホームレス芸人でも遊園地貸し切り・結婚披露宴を開催できる！〜シェア婚からソーシャルな仕組みが見えてくる［連載］デイリー安倍宏行(31)

.経済　投稿日：2013/12/23

［安倍宏行］ホームレス芸人でも遊園地貸し切り・結婚披露宴を開催できる！〜シェア婚からソーシャルな仕組みが見えてくる

Japan In-Depth編集長

安倍宏行（ジャーナリスト）

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花婿と花嫁が天から降ってきた。

そう、ジェットコースターに乗って。

東京浅草にある老舗遊園地、花やしきに歓声が沸き起こった。あまりに早くみんなの目の前を通り過ぎたからシャッターを押す間もない。（笑）そんな感じで始まった昨日の「とある」結婚披露パーティー。主役は、ホームレス芸人・小谷真理君とその嫁、もんちゃんこと、森詩織さんだ。

二人に初めて会ったのは10月27日、大阪の解放食堂（注１）で。聞けばもんちゃんは小谷君のツイッターのフォロワーで、その時、会って3回目だという。小谷氏はホームレスになってから自分の1日をインターネットで50円で売る、という商売（？）をやっていた。もんちゃんはその日小谷君の一日を買って実家のある名古屋から大阪に来ていたのだ。楚々として小谷君の隣ではにかんでいたもんちゃんがその何日か後、彼と結婚するなんて、誰が想像しただろうか。

会って3回目で結婚した、ということで賛否両論巻き起こった。しかし、それは当人同士の問題。周りがとやかく言うことではない。彼らがハッピーならそれでいいではないか。が、ことはそれでは終わらなかった。「でっかい、二人の披露宴をやろうじゃないか！」周りの人が、私も含め勝手連的に立上がった。

多くの人に来てもらいたいから公園など公共の場所を探したが、個人の披露宴では許可が出ない。考えた末、遊園地にした。夜の遊園地に大人が集まり、一緒に盃を傾けてお祝いできたら素敵じゃないか。ということで資金はクラウドファンディングで集めることになった。目標額150万円はクリアした。それだけでは、なんだ、寄付で披露宴を挙げただけじゃないか、と言われそうだが、彼らは他のカップルにも一緒に披露宴を挙げませんか！と公に呼びかけた。すると3組のカップルが名乗りを上げた。理由あって長年式を挙げることが出来なかったカップルや同性愛の女性カップルなども。

言ってみれば「シェア婚」だ。「ソーシャル婚」と言ってもいい。

解放食堂などをいつも手伝ってくれている若者が披露宴実現のために全国から集まってきた。それだけではない。衣装をただで作ってくれる人。ウェディングケーキをこれまたただで提供してくれる人。式の進行台本書いてくれる人。カレーの炊き出しを提供してくれる人まで現れて、ついに昨日の披露宴開催と相成った。

ここで読者諸氏の中には、なんでそんな一文にもならないことに人が集まるんだ？と訝る向きもあろう。それは単純に「楽しい」からだ。誰かのために何かをやってやろう、じゃなくて、ジブンが楽しいからやってるだけなのだ。小谷君、もんちゃんだけじゃなくて、他のカップルも祝福する場に自分が関わっている。単純にそのことを楽しんでいる人が集まった、それだけなのだ。

さて、結婚してホームレスとは、もはや名乗れなくなった小谷真理氏。次なる行動はというと、なんとフィリピンに行って支援活動をするという。正確に言うと、彼が師匠とも仰ぐ、キングコングの西野亮廣氏のアイデアではあるのだが。年明け、これまた新たに寄付してもらい、そのお金を現地の支援活動に使うことを命じられたのだ。ここにもソーシャルな思想が潜んでいる。

僕たちは、被災地復興の為に寄付したお金がどう使われているのか、知りたい。クラウドファンディングが始まったのも要はそういうこと。自分自身が選んだ人やプロジェクトの成功の為に寄付をしたい。そういうニーズがあるからこそ、生まれるべくして生まれたビジネスだ。このフィリピンプロジェクトも、小谷真理君という芸人さんを通して、私たちは寄付したお金の行方を知ることが出来る。彼はツイッターやFacebookなどのSNSを通じてそれを毎日公表すればいいだけのことだ。きっと、それ面白いじゃないか！と多くの人がまたお金を振り込むだろう。

今まで寄付などしたことがないという人も興味を持つかもしれない。被災地の人に手を差し伸べることが出来る。小谷君自身も活動を通じ、芸人として新境地を拓くことが出来る。そして何より、みんな、楽しむことが出来る。そんな価値観があってもいいし、実はこの国には昔からそうした価値観があったのだ。

「三方良し」そう、みんながハッピーになれる仕組みが。小谷君、現地からの報告を待ってるよ。

【注１：解放食堂】 東北の美味しい食を片手に愉快に飲むことが、風評被害をはじめとするネガティブな状況を変えていくんじゃないか！”という掛け声で始まった活動。連続起業家であり、解放集団Liberty主宰の家入一真氏、高木新平氏、ノマドワークスタイルを実践している安藤美冬氏、グローバルに独自のライフスタイルを追求している若者のカリスマ四角大輔氏らが声をかけあり、始まったもの。2013年、東京、大阪などで4回開催された。2014年は名古屋、京都、鹿児島、札幌などで開催予定。

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