仏、“保育ママ”で待機児童問題解決
Ulala(ライター・ブロガー)
先日、保育園に入れなくて職場復帰できなかった女性の怒りがストレートに書かれているブログが話題になっていましたが、「産めよ、働け」と言う割には相変わらず状況が改善せず、現在の日本で女性を苦しめているのが「待機児童問題」。
今だに保育園が圧倒的に少ない上、厳しい審査基準が設けられていて簡単には入れません。それでも保育園の数は年々増えていて改善されているとは言っても、まだまだ追いついてないのが現状なのです。しかし、ただ保育園の数を増やせと言っても、簡単に建設できるわけでもないようです。
例えば、
・肝心の保育士が、重労働の割に給料も安いと言う理由で人材が集まらない
・自治体の意向もありそこら中に建設できるわけでもない
・子供の数が多いため騒音がでると近所住民からの反対がある場合も
大規模であるがために、沢山の保育園をそこら中に作ることには無理があるのです。
しかしそこで疑問に思ったのは、フランスで子育てしていく上で、同じく保育園探しも至難の業だったのにもかかわらず、フランス人達は何かしらの方法を見つけて最終的にはなんとかなっていたと言う事実。
フランスでは1965年頃から保育園が建設され始めました。それまで女性が外で働くことに夫の承認が必要でしたが、その法律が廃止されたことで働く女性が増え始めたからです。そしてその後も働く女性の増加は止まらず、1970年代は保育園の建設がまったく追い付かない状況に。まるで現在の日本と同じような問題を抱えていたのです。
そこで1980年代に失業問題と合わせて改革が行われました。家庭で育児をする場合や、保育ママやベビーシッターを利用する場合にも、補助金が出されることになったのです。保育ママとは自宅に数人の子供を預かる形態で、ベビーシッターは専属でその家庭の子供の世話をします。その結果、子供を保育園以外に預ける需要が高まり、保育ママを始める人も増加しました。
現在のフランスでは、3歳までの子供の世話の全体の52%は親や祖父母が自宅で行い、保育園の利用率はなんと16%のみ。残りの32%はと言うと、保育ママかベビーシッターにて補われているのです。特に、決まった時間に帰れない管理職の母の場合は、2人に1人はベビーシッターを自宅に雇っていると言う調査結果も出ています。(参照1)
仕事を辞めて3歳まで育児する場合にも十分な補助があることから、自宅で世話をするフランス人が大半を占めていますが、働き続けている家庭でも保育園以外に子供の世話を頼んでいる数が多いことがわかります。
保育ママ制度は自宅や専用の場所での少人数体勢のため、保育園よりも設置・運営コストが低く、数を増やしやすいと言うメリットがあります。また、少人数で保育するので騒音も最小限に抑えられ、自治体からの補助により保育士の給料は保育園で働くよりも多くなるケースもあり、普及すればかなり良いシステムであると思われます。
日本には「家庭的保育事業」と言う保育ママ制度があり、保育園の建設と共に、増加対策が練られてきました。それはそれなりに増加しており、全国における家庭的保育事業の保育者数は平成20年には107人だったのが、平成24年には1249人に。利用児童数は平成20年には420人だったのが、平成24年には4672人と一定の成果は出ていますがまだ十分とは言えません。(参照2)
日本はフランスと違って、住居の広さに余裕がない家庭もあるので家を提供して子供を預かることが難しく、なり手が少ないと言う問題もあります。その辺りは、自治体が空いている住居の提供をするなど、日本独自の配慮をする努力がまだまだ必要かもしれません。
お金に余裕が無い。産むのはできても、働いて育てることはできない。産んでも、預け先が無い。仕事に復帰できない。産むことは生活の基盤を崩すリスクとなりつつある現状を早期に改善するために、今まで以上にもっと保育ママの増加を促していくことに力を入れるべきではないでしょうか。
(参照1)Insee 2007 4月 Faire garder ses enfants pendant son temps de travail
(参照2)総務省 ワークライフバランスの推進に関する政策評価書
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この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー
日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。