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経済  投稿日:2016/5/22

日産、三菱自を買収す その4

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遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)

「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」

4. MRP(三菱自リバイバルプラン) by Nissan

MRP by Nissan(日産主導による三菱自リバイバルプラン)、短期的な三菱自の止血策を考えてみる。今期の赤字は仕方がないが来期には黒字転換させる計画を考える。日産のNRP(日産リバイバルプラン)、1999年度の純損失6,843億円から、2000年度は3,310億円の黒字に、少なくとも決算上は1兆円以上のV字回復を見せたアレである。

三菱自の場合も仮に今期赤字転落なら、いっそ徹底的に膿を出し切って損失を全て出し尽くし、その分、来期にV字回復黒字転換させるリストラ案を考えるのであろう。三菱自の激減する国内販売を視野に入れた場合、短期勝負なのである。

三菱自の最大の武器は東南アジアでの高い収益である。前期営業利益1,384億円のうち、アジアは749億円、全体の54%を占める。東南アジアはタイ・インドネシア共に市場全体は弱い。それにも関わらず、このアジアからの利益は32%増加している。円安効果やタイからの輸出増などが貢献している。豪州・中近東なども376億円の営業利益で収益性は高い。

一方、日本は24億円の営業赤字であった。日本での販売台数は24.6万台、うち日産等へのOEMが14万台、三菱ブランドの軽自動車が6万台、登録車が4万台である。

今期、この日本の販売台数は、軽自動車が限りなくゼロに近くなり、登録車も半減以下、日産向け軽自動車も上期はゼロ、下期も30%程度の減少と考えれば、今期合計で5万台程度まで実に20万台近く減少する可能性を覚悟しなければなるまい。日本だけで100億円以上の営業赤字に陥っても驚かない。

来年以降、小型SUVなどの投入もあり、また国内からの輸出台数(昨年実績42万台)の引き上げ努力などの施策を考えても、国内生産規模は前期の63.5万台規模から40万台程度まで減少することとなる。三菱自の国内生産能力は年間80万台強、稼働率は50%を切る。

ゴーン社長が日産に来た1998年当時によく似ており、日産リバイバルプランでは、村山工場・久里浜工場などを閉鎖している。今回の三菱自も同様とすれば、少なくとも、三菱自が持っている国内3組み立て工場のうち、1工場、ひょっとすると2工場の閉鎖が検討項目に入りうる。

日産との中・長期的な生産車種の統合・共通化を考えると、特に岡崎工場閉鎖の可能性が高まる。実際、岡崎工場は以前、三菱自がリコール問題でリストラ案を策定した際に、一旦閉鎖が決まったことがある。その後、撤回されたのだが、今回今一度、その可能性が出るかもしれない。

問題となった軽自動車生産中心の水島工場は、日産が引き続き軽自動車の販売を続けたいということであれば、3工場の中で存続できる可能性は最も高い。

パジェロ製造(岐阜県)は、パジェロやアウトランダー、D5など、三菱自の中でも利益車種が多く、日産の工場では生産が難しい車種が多いこともあり、存続の方向かもしれない。この他、パワートレイン関連工場の京都、滋賀、岡崎の研究センターなども、整理・統合の対象になるかもしれない。

日産には、国内に栃木工場・九州工場・追浜工場・湘南工場の4か所に組み立て工場があり(子会社の日産車体を含む)、年間生産能力は120万台、今期生産台数は100万台。稼働率は80%強で黒字ラインスレスレ。日産と三菱自を合わせると生産能力200万台強となるが、実際の生産台数は140万台程度。

仮に、将来、登録車を中心とした車種統合・共同生産などで生産車種が削減され、国内自動車市場も更に縮小するということを前提にすると、2社を合わせた鳥瞰図では、この生産能力は過大だと言わざるを得ない。日産でさえも1工場の閉鎖の可能性は残る。長期的に日産の国内生産台数を80-100万台程度、三菱自を30-40万台程度と仮定すると、双方合わせて110-140万台規模の生産水準となる。200万台の生産能力に対し、損益分岐点が80%なら160万台、すると20-50万台は能力過剰、工場1つ、ないしは2つが閉鎖対象となりうるのである。

三菱自の国内販売は大幅に縮小均衡、パジェロ・アウトランダー・D5等を中心に残し、中期的には日産からのOEM車販売を扱う。収益重視である。閉鎖する工場は順次売却、人員整理という痛みが伴うが、今期特損で落とし、一部は土地の売却益で賄う。1工場2,000人規模の人員整理で、これに伴う特損は200億円程度、設備の廃棄損等も考えると500億円程度、2工場ならこの2倍だが、岡崎・京都・滋賀などの土地売却益で充当できるかもしれない。

海外は国内よりもシンプル。三菱自は足を引っ張っていたオランダ・豪州・米国の3工場を既に閉鎖しており、大きな赤字事業はない。ただ、日産・三菱自共にロシアに工場を持ち、ルノー・日産はロシアでAUTOVAZを実質的には経営している。三菱自は現地生産(PSAとの合弁工場)から撤退させる。

反対にタイ・インドネシア・フィリピンなどでは、三菱自を中心に日産の立て直しを図る。例えば、現地生産している日産のマーチと三菱自のミラージュを統合する。日産のナバラと三菱自のトライトンを統合する。生産拠点も統合しOEMで三菱から日産に供給する。三菱自の収益頭であるASEANを更に強化する格好である。

ブラジルは日産に統合、三菱自の米国販売店は日産やインフィニティに転換・統合、ロシアや欧州も同様か。世界全般では、調達を統一、技術陣の融合、プラットフォームの統合、OEM車種の増加、日産の金融事業に三菱自も組み入れる。あくまでも日産の三菱自への出資は34%で三菱自は上場維持、“Mitsubishi”のブランド名は残るのだが、その経営基盤は日産と統合される・・・ 三菱自が行っていたとされる“机上でのデータ計算”ではないが、筆者の机上での推論である。

(その5に続く。全5回。その1その2その3も合わせてお読み下さい)

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この記事を書いた人
遠藤功治株式会社SBI証券  投資調査部 専任部長兼シニアリサーチフェロー

1984年に野村證券入社、以来、SGウォーバーグ、リーマンブラザーズ、シュローダー、クレディスイスと、欧米系の外資系投資銀行にて活躍、証券アナリスト歴は通算32年に上る。うち、約27年間が、自動車・自動車部品業界、3年間が電機・電子部品業界の業界・企業分析に携わる。 その間、日経アナリストランキングやInstitutional Investors ランキングでは、常に上位に位置2000年日経アナリストランキング自動車部門第1位)。その豊富な業界知識と語学力を生かし、金融業界のみならず、テレビや新聞・雑誌を中心に、数々のマスコミ・報道番組にも登場、主に自動車業界の現状分析につき、解説を披露している。また、“トップアナリストの業界分析”(日本経済新聞社、共著)など、出版本も多数。日系の主要な自動車会社・部品会社に招かれてのセミナーや勉強会等、講義の機会も多数に上る。最近では、日本経団連や外国特派員協会での講演(東京他)、国連・ILOでの講演(ジュネーブ)や、ダボス夏季会議での基調講演などがあり、海外の自動車・自動車部品メーカー、また、大学・研究機関・国連関係の知己も多い。2016年7月より、株式会社SBI証券に移籍、引き続き自動車・自動車部品関係を担当すると供に、新素材、自動運転(ADAS)、人口知能(AI)、ロボット分野のリサーチにも注力している。

東京出身、58歳

遠藤功治

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