日米安保改定に憲法改正は不要 石破茂 衆院議員
「細川珠生のモーニングトーク」2016年12月3日放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth 編集部(坪井映里香)
先日アメリカ大統領選挙を終え、トランプ氏が次期大統領に選ばれた。選挙期間中から日本の防衛費についての発言や保守主義的な発言を繰り返してきたトランプ氏。日米安保条約に影響は出るのか、元防衛大臣石破茂 衆議院議員に話を聞いた。
まず日本としては、トランプ氏に日米安保条約の重要性と今どれくらい日本が在日米軍駐留経費(思いやり予算)を負担をしているかの理解が求められていると細川氏は述べた。これに対し石破氏は「ちょっと勉強すればわかる」ことだとしながら、むしろ今までは「わからせる努力をこちらがしていない。」と述べ、日本の負担について米側にきちんと説明する努力をしてこなかった政府の姿勢に厳しい見方を示した。
アメリカの大統領や国会議員で日米安保条約を読んでいる人は少なく、専門家が一部を知っているだけだという。「日米安保条約が結ばれてから60年近くたち、安全保障関係が変わっていく中で条約がこのままでいいというのは、憲法が今のままでいいというのと同じくらい変な議論だと思う。」と石破氏は述べた。
「アメリカが日本を防衛する義務を負い、日本はアメリカを防衛する義務を負わないが代わりに基地を提供する義務を負うという世界でたったひとつの、果たす義務がちがう同盟がこれから先も続くか?ということだ。」と石破氏は指摘した。「日本もアメリカを防衛する義務を負うことによって初めて不要な基地は撤退してくれと言う権利を持ち、そういう関係を作ることで初めて情報を手にいれることができる。」と現行の日米安保条約の問題点を強調した。
そして、「なんでもかんでもアメリカの戦争に付き合うのではなくて、本当に共に戦わねばならないとき、共に戦わねば両国とも危うくなるとき、あるいは世界の情勢がきわめて不安定になるとき、そういうときは共に戦う姿勢を鮮明にすることによって日本が得るものはなんですか、という議論を正面からしなければならない。」と述べた。
昨年、安全保障関連法の成立で集団的自衛権を容認した。そのことによって世論は割れ、「戦争法案」だと批判するデモが相次いだ。そうした情勢の中、国会からどのように呼び掛けるのか、と細川氏は問題提起した。石破氏は、「集団的自衛権は国連憲章に定められた固有の権利。日本は持っているけど使えないと言っているがどの国でも持っていて使える。」と集団的自衛権の正当性を述べた。
しかし、集団的自衛権を行使する権利がある他の国々で他国の戦争に巻き込まれたり、集団的自衛権の名を借りて侵略戦争をはじめたりといった事実はどこにもない、と石破氏は言う。「そういう説明をきちんとして、なんで国際連盟にはなかった集団的自衛権が国連の中心概念にすえられたのかという説明をきちんとして、集団的自衛権が認められないことで日本が受けているメリット、失っているものはなんなのかを理路整然と示して議論したときに、なお反対という人は、わたしは見たことがない。」と石破氏は述べた。
国会での説明も避けては通れない、と細川氏は述べ、それに対し石破氏は、「野党の中には、これはアメリカの戦争に巻き込まれるとんでもない権利だと今でも言っている人がいる。与党側が、政府側が相手をやりこめばいいとかそのままやりすごせばいいとかではなくて、野党相手に議論をしているということはその向こうの国民を説得することだとちゃんとわきまえなければいけない。」と強調した。
トランプ氏が来年大統領に就任して四年間、安倍総理の任期はあと二年。彼らがともに仕事をするのは二年間だ。その間日米安保条約をどうするか、日本の防衛をどうするかという話が進むのだろうか。それに対し石破氏は、「安倍総理は安全保障法案で集団的自衛権を容認した。あれ以上認めようと思えば憲法改正が必要ということを言いきっている。」と答えた。つまり、その二年間、日本で憲法改正がなされなければ日米安保条約そのものは変わらないということだ。「そこの考えが違うのでわたしは防衛大臣を受けなかった。」と安倍総理との考え方の違いも述べた。「お互い保守の政治家ですし、日米安保が重要であることも一緒ですし自衛隊の任務を拡大しようという点ももまったく一緒。基本的には違いませんが、わたしは、日米安保条約は改定されるべきだと考えていて、それに憲法の改正は必要ないと考えている、安倍さんは憲法を変えなければ日米安保は変わらないと考えている。そこが違う。」とした。その上で、今の日米安保条約・日本国憲法の枠組みの中でも、自衛隊法の改正、あるいは装備や人員の充実等によってできることはたくさんある、と続けた。
中国や北朝鮮の脅威が目の前まで迫っている中でできることは何か、という細川氏からの問いに対し、「まずは領土を守らなければいけない、あるいは領空侵犯を防がなければいけない。」とした。領土という国家主権を侵害している外国勢力の排除を、警察権力をもって行う現在の状況を、「荒唐無稽なこと」と述べた。石破氏によるとそれは抑止力にもならず、自衛官の命を大事にすることにもならないという。度重なる領空侵犯や領土侵害に、自衛隊が出たからいいというわけではなく、「使っているのが警察権だということが問題」だとし、相手は軍で、こちらは警察でしかないという現状に危機感を示した。
最後に、防衛大臣として最も必要な資質を細川氏は聞いた。石破氏は、「法律と装備と運用と人員についてきちんとした知識を持つことは最低限必要」だとしてその上で、自衛官たちが自分たちの大臣だ、と思ってくれる信頼感が必要だと述べた。大臣の命令ならば危険を省みないで全力をつくす自衛官に対して、命令を下す大臣が自衛官についてしっかり理解し信頼をする、そして信頼を返してもらうことが重要だとした。防衛大臣時代、自身もそこに努力していた、と強調した。
この原稿は、ラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」(2016年12月3日放送分)の要約です。
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。