[石川和男]高齢者向け住宅は必要か?〜最も費用対効果が高いのは高齢者向けに特化した住まいではなく、全世代に通じるような住まいだ
石川和男(NPO法人社会保障経済研究所理事長)
この連載16回目(東京都は日本一の『高齢街』である〜都知事選の争点の一つは明らかに東京都の高齢化問題だ)でも書いたように、東京都は日本一の『高齢街』だ。高齢者の住まい・住まい方のニーズも多様化してくることが予想される。下の資料〔=都道府県別 65歳以上の高齢者向け施設・住まいの整備状況〕を見ると、東京都の高齢者向け住宅整備率はワースト3となっている。
(都道府県別 65歳以上の高齢者向け施設・住まいの整備状況)
しかし、これをどう考えるかの価値判断は分かれるところだ。高齢者向け施設・住まいを高齢者の多様なニーズに応えられるように整備していくことは理想的なことではあるが、他方で費用負担の問題を重々考慮しておく必要もある。こうした指標を見ると、全国平均を上回るようにすることが目標になりやすいが、それほどの財政的余裕があるとは思えない。
高齢者向け住宅の整備は、高齢者ニーズに対応するだけでなく、関係する建設業など多くの産業を潤すことにはなるが、だとしても費用負担の在り方を置き去りにしながら進めることはできない。『高齢者の住まい』とは、若年世代・現役世代への汎用性はない概念である。
財政支援によって高齢者向け住宅を整備していこうとするならば、最も費用対効果が高いと認められるのは、高齢者向けに特化した住まいではなく、全世代に通じるような住まいではないだろうか。
それは結局、太古の昔からそうであるように、要するに『普通の住まい』ということになると思うのだが・・・。
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