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.国際  投稿日:2017/4/1

トランプ政権、国連との関係見直し


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

・米・ヘイリー国連大使、研究機関「外交関係評議会」で演説。

・同大使、「国連人権理事会」の腐敗を非難、離脱も示唆。

・トランプ政権と国連の関係に変化の可能性。

 

米国のトランプ政権の女性国連大使が3月29日の演説で「国連人権理事会は腐敗している」と非難した。同大使は米国が同理事会から脱退することをもほのめかした。トランプ政権はそもそもグローバリゼーションにいろいろな留保をつけ、主権国家の権限を優先させ、国連のような国際機関にはきわめて批判的である。その政権の政策を国連の場に持ち込む女性大使には四方八方から関心が集まっている。

トランプ政権の国連大使は前サウスカロライナ州知事のニッキー・ヘイリー氏(45歳)、インド系のアメリカ人だ。長身の女性らしい容姿で、弁がたつ。政治思想もリベラル派の「大きい政府」に反発して、民間活力重視の「小さな政府」を強く支持する保守派。もともと保守派が多いサウスカロライナ州で2011年からトランプ政権の発足の2017年1月まで知事を務めてきた。地元ではきわめて人気の高い知事だった。

ヘイリー大使はトランプ政権の高官たちの間でも、議会の任命承認を最も早く、円滑にすませた。その後すぐにニューヨークの国連本部を舞台にして、トランプ政権の新政策を発信し続けてきた。トランプ政権は多国籍機関の正統性をあまり認めず、地球温暖化や経済援助には批判をぶつける。

ヘイリー大使もトランプ政権の意向を反映して、国連へのその種の批判を遠慮せずに述べてきた。だがそのわりに反発を受けることがこの2ヵ月ほどの間では少なかった。

そのヘイリー大使が3月29日、ニューヨークに本部をおくアメリカの外交問題専門家が集まる研究機関「外交関係評議会」で演説した。その内容では以下の点がとくに注目されたという。

「いまの世界ではポピュリズムの潮流が国連のような国際機関の土台を揺さぶるように挑戦している。いまこそわれわれアメリカ政府としては、なぜ国連を支えていくのか、その理由を一般国民に対して明確に示さなければならないときだ」

「国連の諸機関のなかでも人権理事会は腐敗している。人権弾圧をしているような国家がその実態を守るためにこの人権理事会に入っているからだ。また『人権』の名の下にイスラエルをいつも一方的に糾弾する傾向がある

トランプ政権では他の高官たちも国連の人権理事会や平和維持活動のあり方に不満を表明している。ヘイリー大使も含めて何人かがアメリカの国連人権理事会からの離脱の可能性をも示唆した。

さてトランプ政権がこのヘイリー大使を通じて国連の活動を具体的にどのように変えようとするのか、関心の的である。

トップ画像:ニッキー・ヘイリー米国連大使 ©Office of the President-elect


この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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