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未分類  投稿日:2017/6/7

試されるマクロン氏 間もなく国民議会選


Ulala(ライター・ブロガー)

フランス Ulala の視点」

【まとめ】

・仏新内閣、半数は女性。左派右派の境界線が消失、既成政党と民間が半々。

・都会部では、外国人との「対立」より「融和」の流れ。

・マクロン氏、最初の関門はフランス国民議会選挙。

 

現在、フランスは、新しいフランスに生まれ変わろうとしています。

5月14日に大統領に就任したエマニュエル・マクロン氏により組閣された内閣は、公約通り22人の半分を女性が占める人事となり話題を呼びましたが、女性が半数の内閣はオランド全大統領の時にすでに実現しており、そのこと自体は目新しいことではありません。それよりも興味深いのは、左派右派の境界線が無くなったこと。および、選出されたメンバーが既成政党と民間からそれぞれ半数であったこと。これは今までのフランスでも例を見ない組閣人事です。

まず、首相に選ばれたエドゥアール・フィリップ氏は、中道ではあるけれども右派からの抜擢。マクロン氏は社会党オランド内閣の閣僚だったこともあり、比較的左派層の協力は得られています。そこで首相を中道右派の共和党員から出すことにより、右派、左派の両方を取り込むことを目指していると思われます。

また、基本的に、国防相を務めたジャンイブ・ルドリアン氏が外務および欧州問題担当相、公務員相を務めたアニック・ジラルダン氏が海外領土相、司法相には中道政党「民主運動」を率いるフワンソワ・バイル氏など、移民問題、テロ問題などが関係してくる省には、政治経験豊富な人材で固められているのに対して、教育相、スポーツ相、労働相などには政治経験がない民間からの抜擢。

民間から登用されたメンバーは国内全体で知名度は決して高くない人も多いですが、各分野内では名前が知られているエキスパート達。特にデジタル相に抜擢されたムニール・マジュビ氏は従来のフランス政界では考えられなかった人事でもあるのではないでしょうか。33歳と言う若さであり、モロッコからの移民である両親を持つパリ生まれ。内閣入りはフランスのスタートアップコミュニティではよく知られた人物という実績が買われてのことのようです。

政党、年齢、男女、移民などこだわらない人事は、自分は左派でもなく右派でもない「真の中道」と言うマクロン氏の言葉が実現されているとともに、政治経験にこだわらず各業界の専門家を集めることにより、現実主義で改革を進めていこうとする意気込みがうかがえます。

■世代は「対立」から「融和」に

マクロン氏は、何度も左派でもなく右派でもない「真の中道」と繰り返してきましたが、この言葉にはたくさんの意味が含まれているのではないでしょうか。例えば、フランスでは世代によって外国人への態度が変わってきていることもその一つ。

日本が「和」を築くことに重点を置いていたのとは反対に、「対立」が意識されてきました。フランスを含むヨーロッパでは歴史的にも常に外からの侵略と戦ってきたこともあり、「外敵に対して対抗したり攻撃する」ことは日常的なことで、外敵とみなせば明確に「対立」を示し攻撃し、自分側とみなす周囲と団結を確認しあいながら身を守る生活を送ってきたのです。そんな環境であったからこそ、まず「対立」からはじまる西洋ディベートが発展してきましたし、右派や左派というきっぱりとした境界線を引いて議論する形がずっと続いてきました。

特に、農村部を中心とした地域では昔通りの生活をしている人も多く、「対立」と言う日常がいまだにかなり見られる地域もあります。こういった地域では「グローバル化への対立」「移民への対立」路線のルペン氏の考えが受け入れやすい傾向にあることも否めません。

しかし、パリなどの都会部に行けばその状況は大きく変わってきます。移民や観光客などの外国人であふれている世界であり、実際に対立していては生活できず共存することが不可欠です。また都会に限らずとも、近年ではフランスの学校ではライシテ教育や市民教育が徹底しているうえ、外国人が身近にいる環境で育ってきていることもあり、若者たちの世代では外国人と「対立」するよりも、「融和」する生活に慣れつつある人も増えていると言えるでしょう。

マクロン氏もそんな「融和」することが日常である時代に生きて来た年代。選挙のスタッフにしても30代~40代が中心。左派対右派の分類はもはや現代政治にそぐわないと大統領選の時にも多くの評論家がそう指摘していたのも、こういった世代の変化からくる感覚の違いを感じていたからではないでしょうか。

しかしながら、内閣も新体制になり左右の境界線などが流動的にはなっているものの、伝統的な分断は現実に今もそこにあることは間違いありません。

■新生フランスが成功するための第一関門は議会選

新生フランスを実現しやすい体制を作るには、議会選で過半数を取ることがかかせません。現時点のアンケートでは、3分の1は取れるとする結果もでていますが、今回の大統領選挙では白票が多かったことが示すように、新大統領の政策に反対する意思を表す国民は従来より多くいます。

6月11、18に行われるフランス国民議会選、それはマクロン政権の最初の関門。今後、新生フランスが成功するか否かを予測するために、大きく注目される分岐点となるのです。


この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

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