.社会 投稿日:2014/2/27
[為末大]事件に歴史あり〜淡々とした日常が、ドラマティックに見える結果を決めている
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
今回、フィギュアスケートの羽生結弦選手が金メダルを獲得した。現在19歳の羽生選手は東日本大震災当時、15歳程度だろうか。当時、多くのスポーツ選手が感じたように、羽生選手もスポーツどころじゃないと思ったそうだ。
そのままスケートをやめてしまっていたら今回の感動もなかった。
選手の戦いはどちらかというと日常にある。出来事はつい目の前で起きていたり、ここ数ヶ月で起きているように思うけれど、本当は「ここまでの数年をどうやってきたか」の方が大きく勝負に影響する。引退した身として記憶もそちらの方が濃い。
人間はそれに費やした時間や労力で、対象の価値を変える。それを手に入れる為に時間を費やせば、手に入れたものが自分にとって大切になる。テレビでよく感動モノがあるけれど、翌日ケロっとしてしまうのは、そこに費やした自分の時間や労力がないから。
「感動したい」と、もし相談されたら、たぶんこんなアドバイスをするんじゃないか。
「何でもいいから継続しないと達成できない目標を決めて、長い時間をかけてそれを達成する事」そういう意味で実は、自分の人生に感動という体験がない場合もある。
リオのメダリストは今、どこでトレーニングをしているのだろうか。2018年の韓国・平昌オリンピックを狙い澄まして、今燃えている選手もいるだろう。淡々とした日常が、ドラマティックに見える結果のほとんどを決めている。
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