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.国際  投稿日:2014/2/27

[朴斗鎮]<北朝鮮・思想活動家大会>60年代用語のオンパレードだった金正恩の演説


朴斗鎮(コリア国際研究所所長)|執筆記事

北朝鮮はいま思想引き締めによる過去回帰へと向かっている。そのために2月26日に閉幕した朝鮮労働党第8回思想活動家大会での「金正恩演説」からは、新しい時代の臭いはなく、古い時代の臭いが充満していた。

演説内容からは「現代」は感じられず、むしろ1960年代後半に使われた用語が氾濫していた。特に強調されたのが1970年代である。北朝鮮にとってその時が黄金時代であったのであろう。金正恩第1書記が生まれる前に使われた古い言葉、固い言葉のオンパレードだったので、多分本人もよく理解していないかもしれない。演説文は朝鮮労働党宣伝部の作品だろうが、もう少し30歳の青年らしい言葉をちりばめて欲しかった。

この演説では張成沢勢力を名指しせず現代版宗派(分派)と表現し、その本質については「現代版宗派の正体は、外に向かっては帝国主義者の圧力を恐れ内に向かってはブルジョア思想文化に汚染され堕落した思想的変質体です」と定義づけた。

しかし、この指摘はむしろ金正恩第1書記自身が受けるべきではなかったのかと感じられる。外に向かっては米国を恐れるあまり、核とミサイル開発に没頭し、内に向かっては「良いものは受け入れなければならない」と言いながら、朝鮮民族の伝統とはかけ離れた米国のミッキーマウスやロッキーの音楽にうつつを抜かし、親指を立てて北朝鮮国民を戸惑わせたのは一体誰だったのか。

ホテルでどんちゃん騒ぎを繰り広げ、顔中にピアスをつけたままサングラス姿で最高指導者に面会する不埒な「悪童」ロッドマンを受け入れ、彼から「キッズ」と呼ばれてもニコニコしていたのは一体誰なのか。夫人のファッションを欧米ブランド品で固めさせ、北朝鮮の若者に「欧米崇拝」と「ブルジョア思想文化」を浸透させたのは一体誰だったのか。

北朝鮮の国民は今回の「金正恩演説」を学習させられながらこうしたことを考えるに違いない。

 

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【プロフィール】

朴_写真朴斗鎮(パク・トゥジン)コリア国際研究所所長

1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。主な著書に、「北朝鮮 その世襲的個人崇拝思想−キム・イルソンチュチェ思想の歴史と真実」「朝鮮総連 その虚像と実像」など。その他論考多数。

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