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.国際  投稿日:2017/11/13

「ロシア疑惑」新展開 トランプ氏反撃


 

古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

・バージニア、ニュージャージー州知事選で共和党敗北、トランプ政権に痛手。

・米下院情報委員会の調査で、ロシアゲートの発端となった「スティール文書」はクリントン選対と民主党全国委員会が雇った法律事務所が作成したことが明らかに。

・トランプ大統領も『ロシア疑惑』は民主党の捏造による陰謀だと証明されたとして反撃の構えだ。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真の説明と出典のみ記載されていることがあります。その場合はhttp://japan-indepth.jp/?p=37096で記事をお読みください。】

 

アメリカのドナルド・トランプ大統領は日本はじめアジアの歴訪では大きな波紋を広げた。

新しい政策の発表もあった。だが肝心のアメリカ本国ではあいかわらず難題に迫られる。なかでも最近のバージニア、ニュージャージーという二つの大きな州の知事選挙ではトランプ大統領にとっては野党の民主党候補が勝ったことの余波は厳しいだろう。トランプ大統領を支える共和党の敗退だからだ。

同時にトランプ政権にとってはなお「ロシア疑惑」も延々と続き、モラー特別検察官の捜査が政権を揺さぶる。そんな状況のなかで、この「ロシア疑惑」に関しては意外な展開があった。

ムラー

写真)ロバート・ムラー特別検察官 flickr : Obama White House

疑惑の発端といえる秘密文書が実は民主党側のヒラリー・クリントン陣営などの委託で作成されていたことが判明したのだ。しかも内容には虚偽が多いという。

同文書はイギリス政府諜報機関の元工作員クリス・スティール氏によって書かれ、「スティール文書」とも呼ばれてきた。その内容はトランプ氏がモスクワのホテルで売春婦と乱交や放尿という騒ぎをした光景をロシア政府機関に記録され、脅されてクリントン候補打倒のための不当選挙操作をロシア側と共謀して実行したという骨子だった。トランプ選対幹部がロシア政府関係者とチェコのプラハで密会し、秘密協力を誓ったとの記述もあった。

このスティール文書は大統領選挙中の昨年夏から概要がうわさされていた。そしてトランプ氏の大統領就任直前の今年1月上旬にネットメディアの「BuzzFeed(バズフィード)」やCNNテレビが合計35ページの同文書のほぼ全容を事実のような扱いで報道した。

トランプ氏はその直後の記者会見でCNN報道を「フェイク(虚偽)」と非難し、怒りをあらわにして、CNN記者を糾弾した。ここからトランプ大統領のアメリカ大手メディアとの正面衝突が始まり、ロシア疑惑も大きく広がった。

ただし同文書の内容に対しては米英両国の情報機関が「根拠がない」と言明し、トランプ氏も同氏選対幹部もロシア側との接触を指摘された時期にはモスクワやプラハにはいなかった証拠を提示した。

だがトランプ陣営への疑惑はなお広まり、文書自体についてもワシントンの政治関連の調査企業「フュージョンGPS」がスティール氏を雇って作成したことしかわからず、謎を深めていた。

ところがアメリカ連邦議会でロシア疑惑を調べている下院情報委員会が同GPS社代表グレン・シンプソン氏や同社の銀行口座記録への召喚状を出して、尋問し、調査した結果、10月下旬、以下の結果が判明した。

 ・スティール文書はGPS社が昨年4月にクリントン選対と民主党全国委員会に雇われたパーキンス・コール法律事務所から委託され、作成した。トランプ氏の弱点や欠点をあばくことが目的だった。

 

 ・同法律事務所ではマーク・エリアス弁護士がクリントン選対と民主党全国委員会の法律顧問を正式に務め、その報酬として合計約1200万ドルを得て、その一部をスティール文書作成費用としてGPS社に払っていた。

 

エリアス弁護士

写真)マーク・エリアス弁護士 出典)Perkins Cole HP

以上の新展開は当事者たちが事実として認め、主要メディアも一斉に報道した。トランプ大統領も「この調査の結果、『ロシア疑惑』は民主党の捏造による陰謀だと証明された」とツイッター発信し、反撃の構えを強め始めた。

 

 

なにしろ疑惑の発端が民主党側が政敵の攻撃を目的に作成させた虚偽文書だったらしいのだ。ロシア疑惑は混乱の末に風向きが変わってきたともいえるようだ。

トップ画像:露プーチン大統領と会談するトランプ米大統領  at the 2017 G-20 Hamburg Summit 出典)ロシア大統領府

 


この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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