日韓の溝 埋めるのは困難 阿達雅志参議院議員
「細川珠生のモーニングトーク」2017年11月18日放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth 編集部(駒ヶ嶺明日美)
【まとめ】
・日米関係は安倍首相―トランプ大統領の下、密になった。
・北朝鮮問題はアメリカが軍事的オプションを取るまでに、取りうる外交的手段はまだあるが、偶発的な衝突の可能性は否定できない。
・日米韓同盟が北朝鮮に対する圧力になるが、日韓関係の溝を埋めるのは難しい。
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トランプ氏の大統領就任から約1年。11月6日には日本で日米首脳会談が行われ、その後トランプ氏は韓国、中国、ベトナム、フィリピンを歴訪し、対アジア外交を行った。今回は、参議院議員で自民党外交部長の阿達雅志氏をゲストに迎え、今後の日米関係と対北朝鮮政策について、政治ジャーナリストの細川珠生氏が話を聞いた。
▲写真 日米首脳会談 2017年11月6日 出典)首相官邸
まず細川氏が「一年前にトランプ大統領が選出されて、安倍総理が会談をしてから約1年経つが、現状の日米関係をどう見るか。」と質問すると、阿達氏は「全体として日米関係は大きく改善した。オバマ大統領の頃は、電話で首脳会談をするといっても、なかなかスケジュールの設定ができなかった。しかし今はすぐにでき、二日連続して電話会談がセットされるということもある。安倍総理とトランプ大統領の繋がり・コミュニケーションは密になった。」と答えた。
細川氏が「安倍総理はトランプ氏の選出後にすぐアメリカに行ったり、2月にフロリダでゴルフ会談をしたり、今回の訪問でも日本でゴルフをしたりしている。日本側はアメリカに対してコミュニケーションをとる努力をしているということか。」と質問すると、阿達氏は「安倍総理が先進国の中では最初にトランプ大統領にアプローチして、そこでいろんな話をした。それがトランプ大統領にとっても良かったのだろう。2月の首脳会談のときにも、トランプ大統領が自ら記者会見で、『我々の間には強い繋がり、良い相性がある』と言っている。」と答えた。
その要因について、「お互いの信頼関関係の醸成に努力した、日本側の行動をアメリカも信じてくれているということか。」との質問に、
阿達氏は「トランプ大統領は、大統領として個性的で、良く言えばリーダーシップがあり、悪く言えば周りの言うことを聞くよりも自分の考えでどんどん進んでいく。そういうトランプ大統領と、密なコミュニケーションを取れる日本の総理ということで、その分日本を大事にしてくれるということが起こっている。」と答えた。
次に細川氏は、北朝鮮問題について質問した。まず、今後の北朝鮮情勢の見通しを尋ねると、阿達氏は「アメリカは最終的には北朝鮮の非核化(を目指している)。アメリカは外交政策の中心に、世界中で限られた核兵器保有国以外が核兵器を持つことを許さないという核不拡散体制を貫くという方針をはっきり持っている。一方で北朝鮮は、自分たちが生き残るためには核を持たないといけないと(考えている)。この両者がいずれどこかでぶつかる可能性は非常に高い。」と答えた。
お互いに歩み寄るということはもう無いということか、との質問には、「最後の部分では無いと思う。ただ、アメリカが軍事的オプションを取るまでに、取りうる外交的手段はまだ沢山ある。」と述べた。
その上で、懸念事項を3点上げた。まず、「北朝鮮は、ICBMと言われる大陸間弾道で1万キロの距離を飛ばせるようになった。これに水爆をのせることができるようになると、アメリカ本土を狙える。そうなると、今アメリカが持っている北朝鮮を牽制するための核抑止力が脅かされることになる。北朝鮮が核兵器を持っているだけなら良かったが、ICBMまで持ってしまった時点で、アメリカとの関係においては、レッドラインをほぼ超えてきた。」という状況で「トランプ大統領が本当にすべてのステップを全部踏むのかどうか。」ということ。
▲ 写真 北朝鮮の大陸間弾道弾 火星13号とされるミサイル 出典)Missile Defense Advocacy Alliance
2点目に、「アジアの地域に、空母が3隻いる」状況で「順にステップを踏んでいる間に、偶発的に何かが起きてしまう」のではないかということ。
3点目として、「北朝鮮が状況を読み間違えることで何かが起きてしまうということは可能性を否定出来ない。」ということだ。
細川氏が韓国について、「日米韓関係が重要であるにも関わらず、トランプさんを接待するのに(韓国は)日本に挑発的な態度を示しているようにも見えた。日韓関係は大丈夫なのか」と質問すると、
阿達氏は「正直なところ、日韓関係の溝を埋めるのは難しいところがある。以前アメリカが間に入って、日韓合意という形で慰安婦問題について決着をつけたが、結局韓国は履行できなかった。対北朝鮮では日米韓が協調していかなければいけない一方で、韓国は経済的には中国に依存しており、北朝鮮に対しては、38度線で国境を接して、同じ民族同士で戦うことには抵抗がある。日本やアメリカとは違う考え方をしている部分が随所に出てきている。」と述べた。
▲写真 日韓外相会談 岸田文雄外務大臣と尹炳世(ユン・ビョンセ)韓国外交部長官外交部長官 2015年12月28日
出典)外務省
その上で、「日米韓が同じようにしっかりと動いていくこと自体が北朝鮮に対する圧力になる。」と述べ、韓国を信頼して協力することが北朝鮮を押さえ込むために必要だとした。
最後に、阿達氏は「これまで日本はミサイルが飛んでくることは想定していなかったが、何らかの間違いによって飛んで来る可能性が無いとは言えない。」、「世界では普通の観光地でも国際テロが起きる。」と述べて、ミサイル危機と国際テロ危機に対して、「国民の皆さんもそういうことはいつか起きるかもしれないんだという認識は必要。」との考えを示した。
細川氏も「(危機に)備えるということは、決して日本が危ない国になるのではなく、世界の常識的なことでもある。私達も冷静に考えなくてはいけない。」と述べた。
トップ画像 (c)Japan In-depth編集部
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2017年11月18日放送の要約です)
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。