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.政治  投稿日:2019/12/12

「中国含めた新秩序を」自民党参議院議員阿達雅志氏


細川珠生(政治ジャーナリスト)

「細川珠生モーニングトーク」2019年12月7日放送

Japan In-depth 編集部(坪井恵莉)

【まとめ】

・アメリカは20年間続けた寛容な中国政策を転換。

・「ルールを基盤とする共通した貿易システム」という認識が変化。

・日本は中国も含めた国際社会のルール作りを。

 

今回は自民党参議院議員の阿達雅志氏をゲストに招いた。商社勤務や法律家として海外経験を持つ阿達氏に、米朝関係の現状と、日本が果たすべき役割について政治ジャーナリストの細川珠生が話を聞いた。

 

■ 米中関係の現状

細川氏はまず今後の米朝関係について聞いた。阿達氏は、「米朝関係はさらに緊張度を増していく」という見通しを示した。

阿達氏によれば、アメリカはかつて「資本主義と人権、民主主義の伝道師」として世界にその価値観を広めていた。ところがここ20年ほどでその動きは停滞し、むしろアメリカの経済を中心とした対応へと変化した。民主主義ではない中国に対しても「国際社会に取り込んでいけば、民主化・自由化に向かう」という考えのもとで貿易政策を進めた。その間、中国の人権問題に厳しい態度を取ることは控えていたという。

中国はその結果、経済大国として成長し、アメリカの脅威となった。また、人権問題については改善するどころか、近年より少数民族などに対し弾圧を強めている。阿達氏はアメリカがこうした状況を受けて、「今までのアメリカの対中政策が間違いだったというふうにはっきり切り替えた」と述べた。

また阿達氏は、2017年にアメリカが発表した国家安全保障戦略で中国が「アメリカに対する挑戦者」と位置付けられた事実を紹介した。そのうえで、「トランプ大統領個人というよりは、今まで対中政策を引っ張ってきた人、親中派の人たちも中国が変わらないことにについて、20年間の中国政策を転換した」と現状を分析した。

 

■ 今後の日本の役割

日本にとって両国は政治的、経済的にも重要なパートナーである。細川氏は日本の今後の立ち振る舞いについて尋ねた。阿達氏は「非常に難しい局面に来ている」と述べた。

今まで政治の問題と経済の問題は切り離して議論されたのに対して、世界的に「政治と経済の問題が完全に合体し始めた」と述べた。背景として挙げられるのが、グローバル化の進展によって経済活動が一国に留まらなくなったことだ。アメリカの企業の製品をアジア諸国で生産するなどアメリカが築いたグローバル・サプライ・チェーンの中で、中国が「極端に大きな力を持つようになった」と阿達氏は指摘する。

日本の立場については「グローバル・エコノミーが進むのに合わせて日本経済は成長してきた。それ(グローバル化の流れ)が急に逆方向に回転し始めた時に、どのように振舞えば良いか、非常に難しい問題だ」と述べた。

▲©Japan In-depth編集部

細川氏は、日本の貿易政策の不安要因を排除するためにはどうするべきか尋ねた。アメリカは、国際社会のルールに中国を取り込む従来の政策は失敗だったとして転換を図っている。一方で日本は、自身も国際社会のルールの中で発展したことから、阿達氏はアメリカとは対照的に「むしろ中国を含めた国際社会を含めたルール作りをもう一度考えていかなければならない」と述べた。

これに加えて阿達氏は、G7やG20会議後に発表される成果文書に近年の動きが表れているという。以前までは「ルールを基盤とした貿易システム(the rule based on international trade system)」というフレーズが毎回含まれていたという。しかし、2018年はこのフレーズが「a rule based on internation trade system」に変更された。共通した貿易システムのルールという従来の共通認識が変化しているためだ。そして、今年はこのフレーズ自体は盛り込まれなくなった。こうしたことから阿達氏は「国際社会の中でのルールがそれぞれで共有できなくなってしまっている」と指摘した。

阿達氏は、中国の力による現状変更に対して日本は「法の支配」で対抗していることを挙げながら「もう一度ルールというのは何なのか、法の支配は何なのかという議論をやっていかないといけない」だと述べた。

世界情勢は大きな変化の時期を迎えているが、日本はあまり巻き込まれていないようにも感じると細川氏は指摘した。

阿達氏は、米中対立によって世界全体の貿易規模が縮小している現状を挙げ、政治的・経済的に日本と関わりの深いアメリカと中国の両国の対立が「日本に影響しないことはない」と述べた。そのうえで、両国と接点の多い「日本がどういう形で新しい秩序、ルールを作っていくのか。そこで果たす役割は非常に大きい」と締めくくった。

(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2019年12月7日放送の要約です)

 

「細川珠生のモーニングトーク」

ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分

ラジオ日本HP http://www.jorf.co.jp/index.php

細川珠生公式HP http://hosokawatamao.com/

細川珠生ブログ http://tamao-hosokawa.kireiblog.excite.co.jp/

トップ写真: ©Japan In-depth編集部


この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト

1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。

細川珠生

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