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.国際  投稿日:2018/1/1

「米中対決」激化へ【2018:アメリカ】


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

・中国は「一帯一路」「アジアインフラ投資銀行」など国際協力強調しつつ、南シナ海での軍事基地化など推進。

・米「国家安全保障戦略」で中露の膨張戦略抑止が不可欠と強調。

・2018年は米中対決が世界最大のうねりとなる。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真の説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はhttp://japan-indepth.jp/?p=37780でお読みください。】

 

さて新しい年の世界はどうなるのか。わが日本はそのなかでどんな課題に迫られるのか。

国際情勢のうねりにはもちろん暦の区切りはない。だがそれでも暦を使い、頼りにする人間の側からすれば、新しい年の幕開けに、立ち止まって、その年の展望を試みることにも意義はあろう。

こんな意識で2018年の国際情勢を予測してみると、まず浮かびあがるのは国際秩序をいまのまま保とうとするアメリカと、その秩序を変革し、打破しようとする中国とロシアとの対立の激化である。とくに日本への影響の大きいアメリカと中国の対決の深化は注視せねばならない。

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▲写真 ロシアプーチン大統領と会談する中国習近平国家主席 2017年11月10日 ベトナムG20首脳会議にて 出典:ロシア大統領府

2017年末までの中国の言動をみれば、世界体制へのチャレンジの基本姿勢は明確である。ただし中国当局自身も、習近平国家主席自身も、言葉の上では闘争的な挑戦はあからさまにはしない。「平和的な台頭」「中国の夢」などという一見、穏やかに響くスローガンを使う。そんな表題での勢力拡大はいかにも穏やかな動きなのだと装ってみせる。「一帯一路」「アジアインフラ投資銀行」などという国際協力を思わせる名称さえも、よく使う。

だが中国のそんな衣の下にはギラギラした野望がちらついている。中国の南シナ海での人工島造り、そしてその軍事基地化をみただけでも、その野望は明白である。東シナ海の尖閣諸島の日本領海にほぼ毎週のように武装艦艇を侵入させてくることも同様である。

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▲写真 中国が軍事基地化している南沙諸島ファイアリークロス礁 出典:CSIS Asis Maritime Transparency Initiative

トランプ政権はそんな中国に対して当初は厳しい対決の姿勢をみせながらも、途中から北朝鮮の核兵器開発の阻止のために中国の協力をあおぐようになった。一時にせよ、協調の姿勢をみせたのだ。だから中国への基本的な抵抗は和らげてしまったのかもしれないという見方も広まった。日本でも著名な国際政治学者が「米中が手を握り、日本が見捨てられる」などという予測を打ち出すようにもなった。

ところがトランプ政権はあくまで対立が基本なのである。その証拠がトランプ大統領が去年12月18日に発表した国家安全保障戦略だった。トランプ大統領はそのなかで「中国とロシアが軍事力や経済力政治力を拡大して、アメリカ主導のいまの国際秩序を壊し、米側の利益や価値観に反する新たな世界を作ろうとしている」と断じたのだ。そしてその中ロ両国の膨張の防止が不可欠だと強調していた。

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▲写真 国家安全保障戦略を発表するトランプ大統領 2017年12月18日 出典:U.S.Department of State Official Blog

トランプ大統領は同戦略のなかでもとくに中国をアメリカにとっての長期的な脅威や挑戦の最大の相手として位置づけていた。そのうえでアメリカが今後インド・太平洋地域で中国と断固として対決していくことを誓ったのだ。

このアメリカ側の中国との対決姿勢は2018年の国際情勢でも基調となるだろう。米中両国はもちろん協調や協力という領域も欠かせない。だがそれでもなお基本は対決であり、競合であり、潜在的な敵対となる、ということである。

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▲写真 中国「抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利70周年軍事パレード」北京 2015年9月3日 出典:ロシア大統領府

この米中対決こそが2018年の世界の最大のうねりとなるだろう。

トップ画像:習近平中国国家主席と会談するトランプ米大統領 G20にて 2017年7月8日 flickerThe White House Official White House Photo by Shealah Craighead


この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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