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.経済  投稿日:2013/10/3

[白木夏子]エシカルなジュエリービジネス


白木夏子 (HASUNA Co.,Ltd.代表取締役・チーフデザイナー)

執筆記事Website

 

2002年から2005年にかけて、私はロンドンで大学生活を送っていました。
ブレア首相がエシカル(倫理的な、道徳的な)政策を掲げた後、イギリスを起点に欧州へエシカルが広く波及していた時代です。

ロンドン市内にはオーガニックやフェアトレードのショップをよく見たし、スーパーにも当たり前のようにフェアトレード認証マーク付きのチョコレートや紅茶、コーヒーが並んでいました。

そんなエシカル先進国であるイギリスの大学で、私は「発展途上国の貧困問題」を研究テーマに掲げ、学業の傍らアルバイトをして貯めたお金で途上国へ足繁く運び、現地調査する日々を送っていました。

一年目の夏休みには、南インドのチェンナイ近郊の、アウトカースト(不可触民)の村に滞在しました。

そこで私は、鉱山労働者たちに出会いました。
連日気温は40度を超え、うだるような暑さの中で、初めて見る鉱山の光景や住民の暮らし。目の当たりにした光景や村人から聞いた話はあまりにも衝撃的で、今でもはっきりと思い出す事ができます。

5歳にも満たないような小さな子どもを含む労働者たち。
僅かな賃金しか与えられず、食事もろくに取らせてもらえず、病気になっても薬も買えず病院にも行けず、ただ死んでゆくのを見守るだけ・・・。生活の為に自分の娘を売春宿に売り渡さねばならない家庭もありました。

採掘していたのは、大理石や雲母。豪華な家屋や家電製品、化粧品に使用される鉱物で、私たちの便利で豊かな生活に繋がっているものでした。

この格差は何なのだろう?

私のイギリスや日本での生活と、目の前にある絶対的な貧困。
この大きすぎる格差を見て沸いた疑問によって、私は企業の倫理、道徳のあり方を考えるようになり、エシカルなジュエリービジネスを立ち上げるに至りました。

私たちが普段から利用している身近な製品の裏に、苦しんでいる人たちがいるかもしれないなど、鉱山へ行く前は考えてもみなかったこと。それを引き起こしているのはビジネスであり、解消できるのもまた、ビジネスである。

 

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【プロフィール】

 

白木_写真白木夏子(しらき・なつこ) HASUNA Co.,Ltd.代表取締役・チーフデザイナー

1981年鹿児島県生まれ、愛知県育ち。名古屋市の高校・短大を卒業後、英ロンドン大学キングスカレッジにて発展途上国の開発について学ぶ。卒業後は国連人口基金ベトナム・ハノイ事務所およびアジア開発銀行研究所にてインターンを経験。2006年に帰国し、投資ファンド事業会社勤務を経て2009 年4 月、株式会社HASUNAを設立。著書に「世界と、いっしょに輝く-エシカルジュエリーブランドHASUNA の仕事(ナナロク社)」がある。2010 年日経ウーマンウーマン・オブ・ザ・イヤー2011 キャリアクリエイト部門受賞。2011 年世界経済フォーラム(ダボス会議)が選ぶ日本の若手リーダー30 人に選出。2012 年Japan Venture Awards2012 中小機構理事長賞受賞。

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