[石川和男]<介護保険法改正案>我が国の法律は、国民にわからないようにできている?!
石川和男(NPO法人社会保障経済研究所理事長)
現在、国会に提出されている「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案」には、2015~2017年度の介護保険サービスに関する介護保険法改正案が組み込まれている。
地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案
このような解読不能な文字の羅列が、国会で審議対象になる正式な法案なのだ。こんなものを読んでも我々国民が2015年度から3カ年の介護保険サービスがどうなるのかを理解できるわけがない。我が国の法律は、国民にわからないようにできている。是正しようという国会議員や官僚はいない。実に奇妙な話だ。
それはさておき、介護保険法改正案の具体的な内容に関してであるが、特別養護老人ホームについて在宅での生活が困難な中重度の要介護者を支える機能に重点化することが柱の一つとなっている。
(資料1)を見ると、要介護3~5(中重度)の認定者の特養入所者割合が要介護1・2(軽度)の認定者のそれよりも増えてきたことがわかる。これについて、(資料2)と対比すると、これまでの介護保険事業における特養入所に関する運用面で、要介護1・2の認定者よりも要介護3~5の認定者を優先させてきたことが見て取れる。
そう考えると、特養入所に当たって中重度の要介護者(要介護3~5)に重点化するという今回の介護保険制度見直しは、これまでの介護保険事業の運用傾向を明確化することと同義だ。介護保険財政の将来を見据えると、こうした制度見直しも止むを得ないとの見方もできる。
だが、介護保険制度の持続可能性の維持という本質的課題に立ち向かっていくには、介護保険財政の費用対効果を極力合理化する方策を見出していく必要がある。つまり、要介護者一人当たりの介護保険給付費を抑制又は削減していくしかない。
中重度の要介護者に対する介護サービス事業コストと軽度の要介護者に対する介護サービス事業コストの比較をキメ細かく行っていくべきだ。
『要介護度が高くなるほど費用が高くなる』のか?
『要介護度が高くなるほど費用を高くかけている』のか?
―― いったいどちらなのだろうか?
(資料1:出典・厚生労働省資料
(資料2:出典・厚生労働省資料)
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