無料会員募集中
.国際  投稿日:2014/5/27

[宮家邦彦]<ウクライナ大統領選挙>親欧米派・チョコレート王が圧勝するも不透明なロシア対策[外交・安保カレンダー(2014年5月26-6月1日)]


宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)

執筆記事プロフィールblogWeb

 

ウクライナで大統領選投票が行われ、外相なども務めた親欧米派の「チョコレート王」ポロシェンコが圧勝したようだ。同氏は早速「混乱を終わらせ平和をもたらす」と述べたそうだが、肝心の東部ドネツク、ルガンスク両州では投票ができていない。

クリミアと東部2州で有権者は全体の20%。プーチンは「ウクライナ国民の選択を尊重する」と述べたが、ポロシェンコはロシアとどう戦うのか。親欧米一辺倒ではロシアが満足しないだろうし、逆に下手に妥協すればウクライナ民族主義者が黙っていない。

最近、欧米の一部にはウクライナの「フィンランド化」議論も聞かれる。「フィンランド化」とは「形式的に議会民主制と資本主義経済を維持しつつも、地政学的には共産主義国の勢力下に置かれる状態」を指す。フィンランド人には不愉快な言葉だろう。

フィンランドは1948年にソ連と友好協力相互援助条約を締結し、独立・議会民主制・資本主義の維持と引き換えに、有事の際にはソ連に協力して戦うと宣言した。経済的にソ連に依存し、マスコミは自主規制、「ソ連の侵略」などはタブーなのだそうだ。

欧米にはウクライナの「フィンランド化」を次善の策と見る向きもあるが、こんなことをウクライナの民族主義者が認めるだろうか。大いに疑問だ。大統領選といえば26日にはエジプトでも選挙がある。ここでは軍部出身者が予定通り圧勝する見込みだ。悠久のエジプトは変わらない。

30日からはシンガポールでシャングリラ対話が始まる。安倍首相が基調演説をするらしいが、それにしても中国が絶妙のタイミングでベトナムや日本にちょっかいを出すのは何故だろう。議論の中心が対中警戒論となるのは目に見えているのに。

更に大臣レベルでも、30日には日米豪防衛相会談、31日には日米韓防衛相会談、日米防衛相会談、日豪防衛相会談が予定されている。最近の中国の動きはますます1930年代の日本に似てきた。

今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

 

【あわせて読みたい】

タグ宮家邦彦

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."