[為末大]<都議会セクハラヤジ問題の本質>本音では何一つ女性の社会進出を望んでいない価値観が垣間見える
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
随分前だけれど、学校の先生が事前に許可を取った上で自分の担任しているクラスを休み、自分の子供の始業式に行った件で、ある議員が苦言を呈していた。教職に取り組む人間の意識の低下を問題視する、という意見だったように思う。
インターネットのアンケートで育児休暇を取らないでほしいという企業が25%ほどあるというデータがあった。理想論としては欧米の基準においつけという方向かもしれないけれど、実際の社会はおそらくそんな事は思っていないのではないか。
子供は産め。ただし仕事もしろ。そして仕事より子供を優先するな。恐らくはこういう本音を持っている人は案外と多いのではないか。女性教員が自分の子供の用事を優先した時、批判をしたのに女性も数多くいた。男性だけの意見とも思えない。
都議会でのセクハラヤジ発言の問題の本質には、本音ベースでは何一つ女性の社会進出を望んでいない人がいるという価値観が垣間見える。そしてそれがある程度共有されていそうな議会の空気も。果たしてそれは議会の空気なのか、社会の空気の縮図なのか。
子供を産みやすい環境は、制度の問題ではなくてどの程度社会がそれを望んでいるかという事だと思う。人口は減少している高齢化も進む、労働人口を増やさないといけない。わかるんだけど響かない。子供は社会の希望だという空気が無い。
子供がいる公園といない公園。両方見てきて全く空気が違った。産まれてくれてありがとう。親だけではなく社会がそう思えるようになったら随分変わるのではないか。
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