[水野ゆうき]<都議会のセクハラ・ヤジはなぜ起きたのか?>議会への関心のなさが招く議員のモラル低下
水野友貴(千葉県我孫子市議会議員 )
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都議会野次問題により、昨年6月議会の一般質問終了後に私が議場で議員に放たれた一言に言及した記事「<政治家のモラルハザード>『今日はパンツスーツだけど生理なの?』と平気で言える議員たち」(http://japan-indepth.jp/?p=1682)が拡散された。
政界の倫理観やモラルについては、当選直後から発信しており、警鐘を鳴らしてきた。今回、大きな反響を得た過去の記事も氷山の一角に過ぎない。
一方で、「政治家の覚悟」という別の記事では、政治家は批判や誹謗中傷に耐える力が必要不可欠であるという内容を書き、佐賀県武雄市の樋渡啓祐市長を例に出したことからも反響が大きかった。
私のように、民間企業でのモラルや常識をそのまま継承して政界に飛び込むと驚くことが多い。とはいえ、政治の世界でこうした言動が横行していることは日常茶飯事であることも私は想定済である。問題言動があった際の対応や改善も政治家のある意味、職責だと思っている。
強靭なメンタルと忍耐力も政治家の資質の一部であることは間違いないが、ただ、今回発言した議員は、結婚や出産という女性の身体的で、デリケートな部分を一般質問中に男性議員が野次を行ったということで、政治家以前に人間として極めて品格を疑う。
私は今年の3月議会本会議の一般質問にて、人口減少問題の中で結婚支援策等を盛り込んだ質問の際に、「結婚も、妊娠・出産も実現できていない私ですけれども」といった主旨の発言をし、議場を笑いの渦に巻き込んだ経験がある。野次は一つもなかった。
自分も当事者として、女性が晩婚化せざるをえない社会情勢などを説明し、市の支援策の充実を訴えるなど、政策を通すためには自分を犠牲にしてでも、議会の空気を読み取りながらあらゆる手法を使う。無論、私の性格上、決して毅然な態度は崩さない。ただ家に帰って一人悔し涙をすることはあった。
また私の場合、議場や委員会室以外における、懇親会や懇談会という場で男性議員から女性の尊厳を傷つけられるような発言や政局絡みでパワハラ発言をされることもある。その時は、切り替えしと反論を必ず行い、しっかりと謝罪に持ち込むようにしている。
本来の議会・政治活動に影響が及ばないように、議会の外でも言動に細心の注意を払い、相手に侮辱されたらきちんと言い返す。そうしたことの積み重ねで、自分に対する他の議員の態度もかなり改善されてきたと感じる。
一方、ここで問題視すべきは、議員の倫理観や品位の欠如のみならず、地方議会の仕組みと有権者の地方政治への関心の低さである。
地方議会は「二元代表制」であり、首長、議員がそれぞれが選挙で選ばれる。議員は選挙で常に戦う相手であり、同じ党、会派でも、敵同士となる。こうしたことから、議員同士、敵を蹴落とそうとする心理が無意識に働いてしまうのかもしれない。
では、こういった問題を解決するにはどうすべきか。議会は有権者の鏡である。今回のような野次発言をした議員を当選させたのも自分たちだ、ということを有権者自身が自覚することが必要だ。
有権者が議会と議員に常に関心を持ち、監視をし、議員の言動等を選挙の際の判断材料とし、それらを元に有権者が投票行動にうつすことで、質の低い議員は落ち、高い議員が当選する。その結果、議会のレベルアップを図ることができる。選挙で議会に送り込まれる我々議員は有権者の監視により、自らの襟を正さざるを得なくなるのだ。
わかりやすく言うとこういった循環だ。
≪議員の資質やモラルを向上させるために≫
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議員各自の自覚&議会の見える化
↓↓
有権者が関心を持ち、議会・議員を監視
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それらを判断材料に選挙にて投票行動へ移す
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議会の質・議員の資質向上につながる
議会の見える化とは、議会がどのような条例を作り、どう通しているのか。議員は議会でどんな活動をしているのか。有権者が見えるようなシステムを構築することに他ならない。我孫子市では本会議も委員会もネット中継が行われている。皆さんの自治体の議会はどうだろうか?
もし議会にアクセスしたくてもできないなら、議会改革が進んでいないという証拠であり、有権者に見せたくない、見られたくない議会構成になっている可能性がある。是非、チェックしてもらいたい。
来年2015年は統一地方選挙がある。今回の問題を契機に、不透明な議会の仕組みや議員の低いモラルを変えたい、我こそは!と思う力強い女性に一人でも多く立候補してもらい、一緒に地方政治を変えていきたいものだ。
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