[水野ゆうき]<ののちゃん県議の当選は「勘違い」?>政党政治ではない地方政治 候補者の見極めが有権者の責務
水野友貴(千葉県我孫子市議会議員 )
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衝撃的な絶叫・号泣会見で日本だけでなく世界をも驚かせた兵庫県議の野々村竜太郎氏。
発端は不透明な政務活動費の支出。その内訳は城崎温泉や福岡、東京など計195回にもわたり支出額は300万円にもなり、更に数十万単位の切手代など含めあまりにも県民を愚弄した政務活動費の使い方に有権者は呆れ果てた。その結果、野々村県議のWikipediaは荒らされ放題となり、様々なコラージュ画や動画もネット上を賑わせている。
政務活動費、すなわち県民の税金の不透明支出疑惑という極めて重大な問題であるにもかかわらず、キャスター宮根誠司氏はじめ、さすがのコメンテーターたちもあまりの「笑撃会見」に笑いをこらえられない様子。
私はかねてから政治家の資質とモラルに警鐘を鳴らし、また地方議会の仕組みについての本質論などを展開してきたが、今回の野々村県議の当選の経緯を見て分かったことがある。有権者が参考とすべき良き事例として紹介したい。
野々村竜太郎氏は「無所属」。しかしながら調べてみると「西宮維新の会代表」という肩書きとなっている。そして政策に「ワン西宮」を掲げている。前回の選挙時、「維新の会」に風が吹いていたことは記憶に新しい。そして「大阪維新の会」の政策の中で有名なのが大阪府と大阪市の二重行政解消という意味で「one(ワン)大阪」だ。
つまり、「維新の会」と「one(ワン)」という言葉をうまく利用することで、橋下徹大阪市長が代表を務める「本物の維新の会」と勘違いした有権者が多く、野々村候補は県議に当選した可能性が高い。これまで野々村氏は4回の選挙に落選している。
このことから橋下市長が記者会見にて「維新の会」とは一切関係がない、西宮は元々ひとつだ、などと野々村県議と無関係であることを話す事態にまでなったのである。
実はこういったことは政治の世界では、日常的に行われている。無所属と謳いながら、隠れ○○党であったりすることはよくあることだ。一番多いのは、所属政党の支持率が低かったり、世間の風あたりが厳しい時は、自分がその政党議員であることを隠すことは当たり前のように行われている。
風が吹いているときはホームページやチラシに大きく「○○党」と政党ロゴマークを記載しておきながら、急降下すると、どこに書いてあるのかわからないくらい小さくする。
地方政治は二元代表制(注)で、政党政治ではない。マスコミの報道に惑わされ、政党名だけで選ぶのではなく、候補者の資質をしっかり見極める必要がある。有権者は、選挙の時に突然現れた候補者なら、そのキャリアをしっかり調べるべきだろう。現職議員であれば、それまでの4年間の活動をきちんと評価した方が良い。えてして、直前の成果だけを過大に喧伝する議員が多いからだ。
今回の事件を他山の石ではなく、有権者は、候補者を正しく評価する技術を身に付けておくことだ。議員は有権者の鏡であるからである。
(注)二元代表制:住民による直接選挙で選ばれた首長と議員で構成された議会が、一定の緊張関係を持ちつつ政策をつくり、相互に牽制しあう制度。国政における議院内閣制と異なる。
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