.社会 投稿日:2014/8/2
[為末大]<サイコパスとは何か>40年の臨床心理研究の結果は「共感を教える事はできない」だった
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
現在の世の中のシステムは、基本的には「人は人に共感する心があり、仮に一時期それが失われているように見えたとしても、何らかの手段をとれば共感する心は取り戻せる」という事を前提に成り立っているように思う。
私達は根本では同じものを共有できると信じている。
臨床心理を専門とする方が書かれた本の中に、サイコパスの中のシリアルキラー、もしくはそれに近い犯罪を犯した人間の性質が書かれている。様々な試みに40年かけて取り組んだ彼の解決法は「共感を教える事はできない。そのように見える振る舞いを教える事はできても。」
「ほら、何々ちゃんが悲しがっているから、あなたも悲しいでしょ」というような事を、皆、共有できるという前提で生きている。でももし、誰がどう傷ついても悲しくも何ともない人がいたとすると、現在の社会システムでそれには対応しきれるのだろうか。
もし、人を傷つける事に全く良心が痛まない人がいて、その人の性質は生涯変わらないとしたら。もし、今までに受けた恩や信頼関係等に全く関係なく、相手を傷つける事をいとわない人がいて、生涯変わらないとしたら。
私も希望は持ちたい。人は変わると思いたい。一方で希望の為に現実を犠牲にするのは、いかがなものかと思う。自分の人生さえ軽んじれば、いとも簡単に人を殺す事はできるという点を、もう少し社会は考える必要があると思う。
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