[為末大]<他人の人生に介入してくる人たち>自分と全く関係のない人から、人生をどうこう言われるという不思議
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
道ですれ違った人の人生は、自分の人生とはほとんど関係がないし、またこちらから他人の人生をどうこういう権限も無いと思って生きている。そしてほとんどの人生は、ただ一瞬すれ違うだけでそれぞれが別個の人生を生きていて、それを尊重すべきだと考えている。
うちの家族は比較的そうだったので、僕が大学を決めた時も、父親は、「へーそうなんだ」という感じだった。他人に介入しないという事は、他人に「こうなってほしい」、「こうなるべきだ」という期待をやめるという事で、一見ドライに見えるかもしれないけれど、僕にとってはとても居心地がいい。
ところが僕とおそらく全く関係のない、おそらく今後も人生がすれ違いもしない人から、僕の人生についてどうこう言われるという事が増えた。何か迷惑をかけたのかと思うと、そんな事もないらしい。どんなメリットがあるのかと言うと、先方には全くメリットがない。
自分には雨を降らせることはできない。地球の自転を止めることも、地震を止めることも。外界はほとんどコントロールが効かないから、外界に合わせてできる事に注力していく。この、至極当たり前の事が理解できていない印象がある。
「自分の思い通りにしたい」と思う人は常に不満がある。「あいつはどうしてああなんだ」、「問題だ、許せない」、怒りを抱えて生きている。見方を変えない限りおそらく怒りは消えない。なにしろ世の中はほとんど思い通りにいかない。適応するしか無い。
他人の人生に介入する人は、他人が「他人」という事がわからない。本当は自分の問題なのだけれど、問題を外に求める。他人に介入しようとしてしまう自分の内側を見つめるほどの勇気はないまま、人生は浪費されていく。
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