[為末大]<馬鹿にされたくない人の成長が止まる理由>馬鹿にされたくない人は新しい事に挑戦しない
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
私は2003年あたりから「ブログ」というものをはじめた。
最初は競技の事を書いていたのだけれど、あんまりにも書く事がなくなって、新聞で読んだような事について書くようになった。よく馬鹿にされた。よくわかっていないのに書くから当たり前だった。
昨年だったろうか、10歳ほど年が下の選手と話していた時、「為末さんは何でも知っていて僕とは違うから」と言われた。僕は「僕の地頭」の事はよくわからない。いいのかもしれないし悪いのかもしれない。でも、少なくとも10年以上前は結構馬鹿にされていた。
今も何かを書いたり発言していると、時々馬鹿にされる。
昔に比べて減ったとしても、確かに変な事を言ったり書いているのかもしれないけれど、よくわからない。よくわからないのだけれど、一つだけわかっているのは「馬鹿にされてもあんまり減るものがない」という事。
馬鹿にされたくない人は新しい事に挑戦しない。とりあえずやってみるという事ができない。「もし馬鹿にされたらどうしよう」と思って動けない。動けないから経験がない。経験がないから成長しない。成長しないから可能性がどんどんと減っていく。
途中をさらけ出せなくて人の成長は止まる。いつもきれいに整えたものを出したい人はプロセスが鍛えられない。いいからさらけ出してしまえ。きっと馬鹿にされるだろうけれど、中身がばれただけなんだから気にする事はない。得る物の方が多い。
ある年齢までは賢さは素養や環境で決まる。ある年齢以上は賢さは「勇気」で決まる。愚かさをさらけ出す勇気がなくてあの人は今もそこに立ち止まっている。
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