【小渕経産相に難問~再稼働への道筋示せるか?~】
Japan In-Depth編集長
安倍宏行(ジャーナリスト)
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小渕優子氏が経済産業大臣に就いたことが、大きく取り上げられている。5人の女性が入閣したことで、「女性最多」などの見出しも踊る。未だに女性女性と言っていること自体陳腐であるが、大手メディアの幹部ほとんどが男であることを考えるとむべなるかな、とも思う。
さて、小渕氏である。これまで原発やエネルギー問題にかかわった経験はほとんどないと思われるが、最大の課題である”原発再稼働“をどう進めるか、手腕が問われる。前任の茂木敏充氏は、エネルギーのベストミックス(電源の最適な構成)も示さず、慎重に事を進めてきた印象だ。しかし、原子力発電を国のベース電源としてどう位置付けるかを示さずして、どう再稼働を勧めるというのか。
こうしているうちにも、火力発電をメインとして電力を確保している我が国は、大量のLNGや原油の輸入を余儀なくされ、およそ4兆円・年に上る莫大な国富が海外に流出し続けている。これをそのまま放っておいたら、既に東日本大震災以前に比べ、2割以上上昇している電気料金はさらに上がる可能性が高い。既に中小企業はもとより、家庭でもその負担はずしりとのしかかっており、消費への足かせになりかねない。
政府は早急に電源のベストミックスを策定し、再稼働に向けての工程表を国民に示すことが求められている。同時にやらねばならないことは、原発の安全性について正確に国民に説明することだ。世界最大級の東京電力柏崎刈羽原発を筆者が2012年に視察した時、既にかなりの地震・綱治対策が施されていたが、その後、原発の安全対策がどこまで進み、実際にどう安全となったのか、全く周知されていない。メディアもさして報じていない。
私達が知りたいのは、原子力規制委員会が策定した「新・安全基準」を各原発がどうクリアしているかどうかである。又、活断層のリスクもある。それらを含め総合的、科学的に判断した結果を示してもらいたい。
小渕氏には、原発行政を預かる経産大臣として、毅然と、明確に「再稼働」の必要性について国民に説明することが求められる。反原発・再稼働反対の声に配慮するあまり、本来政府がすべきことを先送りしてはならない。結果としてそのつけは国民に回ってくるのだから。
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