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.政治  投稿日:2014/7/31

[Ulala]<「閣僚の半数が女性」を実現した仏のクオータ制>2020年までに女性管理職30%を実現させるために


ulala(ライター・ブロガー)

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女性の管理職への登用・活用について、国際的にて日本は確かに遅れている。

フランスの女性の管理職の割合が39.4%(2011年)で日本が11.1%(2012年)と言う差を見てもそれは明らかだ。しかしフランスも昔から現在の体制だったわけではない。フランスの女性はかつては不遇な時代を送ってきた。

1970年頃から結婚後も働き続ける女性が増えてくる中、家庭を持っても「女性も経済的に自立し、結婚後の経済的な面もお互いの責任」という関係が普通となっていく。もちろん個人差や地域差はあるが、女性が働くようになると男性が伴侶を養うといった感覚は薄れていったのだ。

それにもかかわらず“女性の方が家事負担は変わらず多く”、仕事しても“男性より少ない報酬”なのに“家庭では経済的に同等の負担”を求められ、“老後は受け取る年金も男性より少ない”。そんな格差に女性の不満感はかなり強かった。

しかし、その不満の高さが女性を大きく後押しし、平等化を訴える大きな原動力となる。その結果、フランスでは男性も家事を手伝うように変化し、男女格差に対してさまざまな対策が講じられ、女性の働く環境の改善と共に女性が管理職に付きやすい状況になったとも言える。

それに対し、生活も豊かで女性が守られた形の結婚が持続していた日本では、結婚して仕事を辞める女性も多く、小泉政権時代に女性の管理職増加を唱えていたものの、そこまで積極的な活動は行われてこなかった。女性の管理職の割合の変化は、2005年から2012年の7年間を見てもたったの3.3%上昇したのみ。現在、安倍政権では2020年までに30%に上げる目標を立てているが、今後6年間で残り19%上昇させることは、何か特別なことをしない限りかなり難しいだろう。

そこで、起爆剤として有識者の間で提案されているのが「クオータ制」の導入だ。クオータ(quota)とは、「割り当て、分配」を意味する。

もともとは政治における男女間格差を是正するための暫定的な方策で、議員・閣僚などの一定枠を割り当てる制度のことを指す。発祥の地であるノルウェーでは、一般企業に対しても法制化し、取締役会など経営中枢への女性進出に大きな効果を上げている。

フランスではじめてクオータ制に関する選挙法典改正案が出されたのは1982年だった。が、この当時は女性のみを優遇する措置を取ることはできないとし、憲法院はクォータ制導入法案を違憲とした。

しかし、時代が流れると共に「形式的平等」にこだわったまま低い女性の政治参加を放置していることは、実態的差別を容認することになってしまうことが危惧されはじめ、積極的に「実質的な平等」を生み出すべき、と言う考えが受け入れられるようになる。そこでフランスでも、2000年に50%クオータ制のパリテ法を成立させたのだ。

クオータ制は、例えばオランダでは2015年までに「取締役は男女ともに30%以上」を義務付け、守れない場合はペナルティーを課すことになっている。フランスのパリテは「平等」と言う意味があり、選挙によって選出される議員職と公職の女性と男性比が同じになることを目指し、候補者の男女比が同率でなければ政党助成金が減額されるなどのペナルティーを科した。

結果、議会の女性の数が飛躍的に増えた。またオランド政権では「閣僚の半数が女性」を実現。企業については2017年までに男女ともに管理職を40%以上にすることを掲げている。

このようにクォータ制は、思い切った数値目標の下、優秀な女性を積極的に登用することで「あたりまえ」という状況を作る手助けをすることができる。「あたりまえ」の状況を作ることで、その「あたりまえ」が受け入れられるようになっていく。意識を変えていかなくてはいけない日本で、今、一番必要なことかもしれない。

 

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執筆者紹介】

gazou623ulala(ライター・ブロガー)

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、ライターとして活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

 

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