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.経済  投稿日:2014/11/20

[七尾藍佳]【「経済的自殺」と囁かれた消費増税の帰結】~“GDP解散”その1〜


七尾藍佳( ジャーナリスト・国際メディアコンサルタント)

「七尾藍佳の“The Perspectives”」

プロフィール執筆記事

 またしても師走の選挙だ。二年前の選挙翌日、私は自民党本部からBloomberg TVの放送網に向けてレポートをしていた。とにかく寒かったのを覚えているので、今回も師走だなぁ、と感じるのだ。

私はこの夏にブルームバーグを退職したが、この二年間の印象を言うと、

「政治が変わっただけで、これほど世界の日本に対する注目度は変わるものか」である。民主党の野田政権までは、日本の政治の動きを香港にいるプロデューサー陣に報告しても、「毎年総理大臣変わるからよくわかんないよ。別にどうでもいいよ。はい、じゃあ中国の全人代のネタで行こう」という扱いだったのが、「アベノミクス」という言葉が流行語になる頃には、毎日のように政治ネタでレポートしろ、という指令が飛んで、ひぃひぃ言うようになった。

今回の、一見唐突に見える解散総選挙だが、在京の経済系外信記者や、欧米主要経済紙の特派員たちには、それほどサプライズでは無いようだ。というのも、景気が悪いからである。そして、その景気の悪さは、消費増税の当然の帰結と言える。

安倍総理が三党合意にのっとって、消費増税に踏み切ったとき、ある著名米国人コラムニストとこんな会話を交わした。

“This is an economic policy suicide.”「これは経済政策の自殺行為だよ」

「そうだね、1997年の消費増税不況をみんな忘れているよね」

「そりゃあ、少子高齢化が進む今、財政を何とかしないといけないのは自明の理だけど、何とかして景気を浮揚しようとしている時にやることじゃないよ。正気の沙汰とは思えない。Crazy だ」

「でも大きな声でいいにくいよね」

「そう、だって世界中がアベノミクスにCrazyになっているんだから!」

Crazy―クレイジー、には二通りの意味がある。文字通り、「狂ってる=正気の沙汰とは思えない」のクレイジー。もう一つは、マドンナの”Crazy for You”という曲にあるように「あなたに首ったけ」「ぞっこん」という意味だ。

私とコラムニストの会話をまとめると、「消費増税はCrazy=正気の沙汰ではない」のだが、「世界中がアベノミクスにCrazy=首ったけ・ぞっこん」なので、誰も耳を傾けてくれない、というジャーナリスト同志の愚痴である。

日経平均はうなぎのぼりで、円安が急速に進む中、円ショート・日経ロングのペアトレードを意味する、The Abe Trade=ジ・アベ・トレードなる言葉が世界中の投資家の合言葉となった。そうした状況だからこそ、政策の先行きへの懸念事項を伝えるのもプレスの責務なのだが、いくら言っても「アベノミクス」の大合唱にかき消されてしまう。

当時よく引用したのは、かねてから消費増税に異論を唱えてきた本田悦郎内閣官房参与と、米イェール大名誉教授で同じく内閣官房参与の浜田宏一氏の見解だった。両氏共にインタビューしているが、特に印象に残っているのは、昨年、本田氏を官邸内の一室でインタビューした際に、彼が消費増税後の景気後退をほぼ既定路線として話していたことだ。

本田氏は、「今日本は、デフレを克服しようという先進国の最初の例であるにもかかわらず、増税をしなければいけないという特異な状況」だと説明した上で、予想以上に景気が落ち込んだ場合には日銀の追加緩和が必要になる、黒田氏はそれをやるだろう、と発言している。まるで予言のようだ。そして、実態経済の数字を見ると、彼の見立てが極めて正しかったことがよくわかる。

また本田氏は、Good momentum=経済の強い勢い、を保つためには、何よりも企業と個人の「センチメント」が大事だ、とも言っている。その「センチメント」の逆風が吹き荒れたのが、11月17日に発表された7-9月期の日本の実質国内総生産(GDP)速報値。前期比年率で1.6%減、2四半期連続のマイナス成長は、欧米の定義ではrecession 、「景気後退局面」に当たる。

要するに、この最新のGDP値を受け、欧米は、日本は「景気後退局面に入った」と見るようになった、ということである。これまでの日経平均の目覚ましい上昇トレンドを主導してきた外国人投資家にとって、これは投資ポジションを調整する材料となる。日経平均を政策成功の目安としている政権にとって、日本経済は看過できない危険な水域に入ってしまったのだ。

このGDP、ブルームバーグ集計による事前予想の中央値は年率換算で2.2%増だったわけだから、まさに想定外のマイナス成長。しかも、4-6月期のGDPも、年率換算7.3%減に下方修正されている。

(続く)

 

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