[Ulala]<家庭の収入と出生数の関係>フランスの育児補助がGDP比3%に対し、日本はわずか1.04%
ulala(ライター・ブロガー)
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内閣府の資料「少子化問題について(平成26年2月24日)」によると、日本でカップルが理想の子ども数を持たない最大の理由は「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」である。39才以下では、どの年齢層でもこの項目が70%以上と高く、40才を超えると経済面での理由は低くなり、年齢・身体的理由が増加する。
日本の経済が潤っている間は1人の収入で一世帯を賄えていたが、現在はそれが難しくなってきている。特に教育費がかかる日本では、家庭の経済力が子供の人数に影響するのは仕方がないだろう。かと言って共働きをしようにも、現状では子供を預ける場所さえ不十分だ。では、80%の女性が働いているフランスは、どのように子育て環境を整えてきたのだろうか?
フランスでは、女性解放運動後、女性が仕事をする権利を勝ち得て共働きも増えた。そこで1970年代から保育所を増やす政策を開始したのだ。しかし、80年代に入ると女性が子育てをしつつ仕事をするには、保育所だけでは十分ではないと言う意見が主流となってくる。女性の働き方が多様化してくる中、個々に対応した柔軟な保育が必要になってきたのだ。
そしてそんな議論を続け、ようやく1994年に家族関連法が成立し、認定保育ママを雇用する家庭に対する援助(AFEAMA)と在宅保育手当(AGED)が導入された。その結果、より柔軟な保育体制がとれるようになり、現在は多くの人が保育園、保育ママを利用して仕事を継続している。また3才までは自宅で子育てしてから仕事に復帰するなど、個人にあった様々な方法で子育てと仕事を両立している。
ここで、フランスの「特殊出生率」と照らし合わせみると、実は、制度が整った頃から出生率が伸び始めているのが分かる。
女性が子育てしながら働ける環境が整い、家庭に入る収入が多くなり、さらに国の補助が充実したことで、家計にとって一時的に大きな負荷になる保育にかかる負担が軽減された。その結果、経済力が安定し、理想の数の子供を持てるようになったのだろうと考えられる。
こういった体制を整えるために、フランス政府は多く支出してきた。「各国の家族関係社会支出の対GDP比の比較(2007年)」を見ると支出は3%も占める。それに比べ日本は、児童手当を加味しても、2011年度は1.04%であり、少ないことが分かる。
ただし、その代わりにフランスはTVA(日本でいう消費税)が20%であることをはじめ、日本に比べ国の財政に対する国民負担率が高く、子育て世帯の負担の度合いは単純比較できない側面もある。
今年、日本は消費税が5%から8%にあがり、これを財源に0.7兆円程の予算が組まれ、保育ママなどを含む地域型保育や認定こども園の整備が計画されることになった。その内容を見ると、保育所だけではなく、保育ママや居宅訪問型保育などの各地域の状況に合わせた地域型保育など、柔軟な保育の手助けも視野に入っている。
女性が働く環境作りが他国に比べて遅れている分、他の国の例を参考にすれば、少ない予算で短期間に、かつ効率的により良い体制を実現していくことは不可能ではない。期待したい。
【執筆者紹介】
日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、ライターとして活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。
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