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.国際  投稿日:2014/12/23

[遠藤功治]【全米騒然、日本車メーカーも狙い撃ち】~タカタ製エアバッグリコール問題 その1~


遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)

「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」

執筆記事プロフィール

 

2014年の北米での自動車リコール台数が、6,000万台を超えたそうです。今年の米国における自動車の市場規模は約1,700万台ですから、1年間に販売される新車台数の3.5年分に相当する自動車がリコールされたこととなります。過去の最高記録の約2倍という不名誉な記録です。

これは、GMのイグニション不具合に伴うリコールと、最近世間をにぎわせているタカタ製エアバッグのリコール、共に世界で2,000万台を超える大規模リコールが発生したことが大きく影響しています。また、最近は各国での規制強化などに対応、自動車メーカーが積極的に率先してリコールを発表する傾向にあることも、全体のリコール台数を押し上げる要因となっています。

一旦市場に華々しく製品投入をしておいて、不具合が見つかった、ないしは将来問題になりそうだから、一旦リコールしてチェックします、と言う訳です。問題が大きく深刻になる前に、予防的措置としてリコールをする、というケースは確かに多くなっています。

ただ、今回のタカタ製エアバッグの件は、既に死亡事故が発生していること、リコール総数が相当に大きいこと、このエアバッグを装着している自動車メーカーが多岐に渡ること、2008年から何度もリコールが繰り返され、根本的な問題点がいまだにはっきりしないこと、などの点で、相当深刻です。

今回のリコール問題、日本の関係者が当初想定した以上に、米国で大きな社会問題となっています。2008年に初めてリコールされた時点から考えると、今のところ2,000万台以上の車がリコール対象となっていますが、いまだにその台数が増加しているのが現状です。

タカタが日本の自動車部品メーカーであり、また搭載された自動車ではホンダ車が最も多い事例であったにも拘わらず、米国でより深刻な問題としてメディアに取り上げられた一方、日本では余り大きな報道は当初されませんでした。

米国で大きく取り上げられている理由は、エアバッグのリコール台数が、米国で1,500万件と圧倒的に多いこと、このエアバッグで事故となり、4人の方が米国で亡くなったとされていること、そして何より、原因究明に手間取り、自動車メーカーのリコールが遅々として進まなかったこと、ホンダが1,700件余りの不具合の報告を監督官庁に怠ったこと、ホンダないしはタカタの問題認識が実は遥か前からあり、リコール隠しではなかったのか、という疑惑が取り上げられました。

先日も米国の上院・下院の公聴会にタカタやホンダの幹部が呼び出され、厳しい質問に晒されました。米国でも注目の公聴会でしたが、その中で少なくとも米国民や議員・監督官庁には、タカタが誠意を持ってこの問題に対処していない、との印象を持たれてしまい、米国の民意を敵に回してしまったこともことを大きくしました。

このタカタ製エアバッグのリコール問題を5回に分けて検証したいと思います。

(その2に続く。25日掲載予定。その後、27日、29日、31日と掲載します。)

 

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