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.社会  投稿日:2015/3/28

【「プロ新人」の商品価値は「楽しむ」こと】~新・社会人へのメッセージ~


七尾藍佳 ジャーナリスト・国際メディアコンサルタント)

「七尾藍佳の“The Perspectives”」

 

「社会人」って何でしょう。今回編集部から「新・社会人に送るメッセージ」をテーマとした原稿の依頼を受けて、考え込んでしまいました。一般的に「新・社会人」とは、大学ないし高校などを卒業した「新卒」の方々が、企業や自治体などの「組織」に「正社員」として雇用されることを指すのでしょう。

ただ、私は大学在学中からライターや通訳などの仕事を「フリーランス」で始めて、大学卒業後も就職ぜずにそのままフリーとして仕事を続けたので「新卒」体験がありません。そんな私に、「新社会人」の方々にできるアドバイスなんてあるのかしら、と頭を抱えてしまいました。

でも、考えてみれば学生時代にやったすべての「初仕事」の場面において、私は「新卒」みたいなものでした。海のものとも山のものともつかない二十歳そこそこの私に対して「給与」を支払うと決めた「依頼主」たちは、学生だろうが若かろうが、私をその仕事の「プロ」と見てくれたのですから。

当時の仕事を振り返ると「プロ」と言うにはおこがましいほどの荒い仕事ぶりに顔から火が出る思いです。しかし、今の私に当時と同じものを書けと言われても、絶対書けません。たとえば「一生懸命さ」もちろん今も一生懸命ではありますが(笑)、自分が書いたものが「活字」になって憧れの雑誌に掲載され、多くの人の目にふれる、ということへの喜びと興奮にハイになりながら、そのチャンスに「応えたい」という情熱に突き動かされた「一生懸命さ」は、ある程度キャリアを重ねてきてしまった今の私には、やはり無いものなのです。それが駆け出し当時の私の「商品価値」だったのです。

そして、「新社会人」のあなたの「商品価値」もまったく同じこと。「社会人」とは「社会」に対して自らのもつスキルや労働力を<商品>として提供し、その対価として<賃金>を受け取る「プロフェッショナル」を指すのだと思います。

あなたの「売り物」とは何でしょう?「新社会人」は共通して「若く」、「経験が浅い」もの。これはとても素晴らしいことで、あなたを雇ったオジさん・オバさんたちには、悲しいかな逆立ちしても手に入りません。そう、あなたの最初の給与は「プロの新人」であることに対して支払われる対価で、新人であることこそあなたの商品価値であり、強みです。

製造業・非製造業を問わず、ありとあらゆる産業分野で、事業戦略の核となるのは「Outlook」=「今後の需要を先取りする視点」。多くの企業がリサーチ会社やコンサル・ファームに多額のフィーを支払って「未来予想」を依頼しますが、実はあなたはその「未来予想図」そのものなのです。あなたの趣味・嗜好や今後の人生計画はすべて、これからの時代に「売れる」モノを指し示しています。

加えて、「日本の若者」であることは世界的にも価値のあること。ユーザー登録者数が一千万人を超すクラウド・データ・サービス会社、EvernoteのCEOフィル・リービンにインタビューをした時、彼がこう言いました:

「みんなGoogle やFacebookがアメリカだからってこれからのITを牽引するのもアメリカだと思ってるけど、実は日本なんだ。なんでかというと、今まではネットの“インフラ構築”の時代。ここでは確かにアメリカの独壇場だった。でも、もう大体の枠組みは出来上がったんだ。これからはそれをどう洗練させて、そこに“何を”乗せるか、という“デザイン”の時代だ。この“デザイン”が世界で一番得意な人たちっていったら、日本人をおいては他にいないよ」

シリコン・バレーお墨付きの日本の若者の感度の高さが、次のヒット商品のヒントとなることは、世界のビジネスパーソンにとって常識となった今、日本の「プロ新社会人」に求められるのは、「楽しむ」ことです。

我慢しろ、耐えろ、ボロ雑巾になれ、と言われて「数と量」で勝負してきた高度経済成長期は終わり、これからの日本は「ソフトパワー」で稼がないといけない。そのためには、「新社会人」のあなたが、生活と働くことを「楽しむ」ことが何よりも大事。

自分の心を躍らせてくれる事柄に敏感であり続け、どこへ行くにも「楽しい」の気持ちを目一杯表現した笑顔で登場するようにしてください。そうすればきっとすべてうまくいくでしょう。


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