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.社会  投稿日:2015/4/1

【何処に住むか、誰と生きるか、何をするか】~新・社会人へのメッセージ~


 

安岡美佳(コペンハーゲンIT大学 研究員)

執筆記事

「デンマークから学べること」 “What can you learn from Danish young?”

今、新社会人となる皆さんは,何歳だろうか? 4年制大学を卒業し、この春就職ということであれば、22-23歳になるだろうか。ようやく社会人になれると期待に胸を踊らせているかもしれない。デンマークでは、大学卒業の平均年齢が、EU平均よりもはるかに高い29歳と報告されている。

なぜ、それほどまで時間がかかっているのか、それでいいのか、不思議になりませんか?内訳を見てみると、高校生を始める前や大学を始める前に、ギャップイヤーを取得するデンマークの若者は多く、入学年齢の平均は、20-22歳。それでも、5年制大学(デンマークの大学は通常日本の学士と修士にあたる5年の過程だ)で、7年近く過ごしているわけだから、かなりのんびりした学生生活を送っていることになる。

ところで、充実した人生を送るために、なるべく早く決めるべきと私が考えていることが3つある。それは、どこに住むかwhere to live、誰と生きるかwho to live with、何をするかwhat to doの3つだ。これらを、20代のうちに考えて欲しい。これが、本稿の私からも新社会人に向けたメッセージなのだけれど、デンマーク人はこの3つを考える機会を20代のうちに得ていると考えていて、その辺りは日本人にとっても参考にして良いと思うのだ。今回は、そんな話をしたいと思う。

 

どこに住むか、誰と生きるか、何をするか

「どこに住むか」ということは、なにも住所をはっきりと決めろということではない。物理的な東京という場所かもしれないし、日本やデンマークというもう少し大きな枠組みでみた場所かもしれない。もしくは、遊牧民のような生活をしようという決心でもよい。

「誰と生きるか」は、おそらくパートナーを探すというのが一般的だろうけれど、親などと一緒に生きる、もしくは、独身を貫くという決断も入るだろう。「何をするか」は、就職先を決めるというのではなく、一般的にはどの道に進みたいか、何を人生でやっていきたいかを決めるということと言えるだろうか。

3つの決断は、どれも中小様々な人生の選択肢に大きな影響を与えるものだ。これが基盤になって、その他の選択ができる。可能ならば、3つの選択肢がバランス良く達成できると良いけれど、もしかしたら、優先順位が必要な場合もあるだろう。たとえば、私は現在のデンマーク人の旦那と、少なくとも子供が成人するまではデンマークという国に生きることを決めた。だから、日本でよい研究プロジェクトや就職先があっても、とりあえず今は、デンマークでの研究を中心に仕事をすることにしている。

 

どうやって探すか

この人生の3つの基盤を探すのは、時間がかかる。時間をかけて決めないと後悔する。37歳の今振り返って考えてみると、おそらく基礎教育が終わる15歳から30歳あたりまでが方向性を決める重要な時期だ。その時期は、基礎的な社会の知識がつき始め、自分で計画を立てて実行に移すことができるようになる。同時に、後先考えない馬鹿な試みや自分の限界に思う存分挑戦することができる時期で、かつ、取り返しがつきやすい時期ともいえる。

30歳以降は制約が多くなり、知能、体力的な限界も見えて来る。たとえば、女性も子供が欲しいと思うのだったら、20代の時期によく考えておくことをお勧めする。最近では、医学の進歩もあり、40代でも出産は珍しくないが、様々な困難が伴う確率が高くなるし、高齢出産、育児は大変だ。また、限られた事例しか持ち合わせてないが、30代近くに仕事をやめる決心をして、何をしたいか探すのは、しないよりはいいだろうが、非常な精神力と体力とお金が必要になってくる。

20代は、様々な可能性に挑戦すればいい。それが、がむしゃらに働くということでも、他の経験をするというのでもいい。ただ、10年かけて3つの基盤を決めることを念頭に置き、無為に時間を浪費するのは避けることを勧めたい。結局、いろいろなことが決まるのは30代かもしれないけれど、そこの頃までにどれだけの豊かな経験をしているかが、その後の人生の礎をつくることに大きな影響を与えるのだと思うからだ。自分探しの名の下でただ旅行しまくるとか、考えずにがむしゃらに仕事だけをするのはやめたほうがいい。

30歳間近になってようやく大学を修了するデンマーク人は、「まだ働いていない」という立場を活用し、少ない社会的制約のもと、20代のほとんどを大胆な自分探しに費やす。それは企業でのインターンかもしれないし、社会的プロジェクトを立ち上げることかもしれないし、1年間放浪することかもしれない。社会的にもそれが許されているデンマークは、20代前半で就職し制約が多く生まれてしまう一般的日本人よりは、その後の人生の基盤作りの20代の貴重な時間を費やしやすい。

新社会人の皆さんには、30歳になった時に、3つの問いへの答えが見つかるような毎日を過ごして欲しいと思う。

 

 


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