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.国際  投稿日:2015/9/23

[古森義久]【中国軍戦闘機、米軍偵察機へ異常接近】〜習近平国家主席訪米直前に〜


古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

執筆記事プロフィールBlog

アメリカ国防総省は中国軍戦闘機の米軍偵察機への異常接近があったことを9月22日、発表した。この異常接近もその発表も中国の習近平国家主席の訪米にタイミングを合わせたような印象だった。だが実際はこの国防総省の発表はベテラン米人記者のスクープ報道の追認だった。オバマ政権としてはこの時期のこの事件の公表を米中首脳会談への悪影響を配慮して、あえて差し控えていたようなのだ。

同国防総省報道官は22日の記者会見で中国の山東半島東約130キロの黄海上空国際空域で米軍の電子偵察機RC135に中国軍の戦闘機JH7が2機、接近し、うちの1機がRH135の前方150メートルという異常な近距離を横切った、という情報を明らかにした。同報道官はこの異常接近はきわめて危険だった、と論評した。この事件は9月15日に起きたという。

この国防総省の発表は同じ22日にワシントンの軍事、安保専門記者ビル・ガーツ氏がインターネット新聞の「ワシントン・フリー・ビーコン」紙で詳しく報じた記事の内容を事後に確認する形だった。ガーツ氏といえば、同紙や「ワシントン・タイムズ」の特別記者として1990年代から活動し、多数のスクープ報道をものにしてきた。

今回の報道も明らかに国防総省が知っていて、あえて公表しなかった情報で、ガーツ記者の報道に対しても国防総省当局者は当初は「論評できない」と述べていた。この態度は習主席が22日に米国入りして、24日にはオバマ大統領との米中首脳会談にのぞむという微妙な時機に、両国の対立を強調するような両国軍機の異常接近はあえて内密にしておくという政治判断の反映だとみられる。

なおガーツ記者は今回の異常接近を報じた記事で、さらに昨年8月にも南シナ海上の空域で中国軍の迎撃機J-11が米軍の海洋偵察機P8に距離15メートルという異常接近をしていたことを報道した。この時の方が今回よりもさらに危険だったという。

中国側のこの種の異常接近に関する真の意図や米国側のその情報の処理に関する考え方にはなお不明の点が多いが、米中両国が軍事面でもこのような危険な異常接近を頻繁に起こしている現実は日本側としても十二分に認識しておく必要があるだろう。


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