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.国際  投稿日:2016/5/10

アジアでもトランプ現象 フィリピン大統領選


 宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2016年5月9日-15日)

今回は出張先の大阪で書いている。今週の注目はフィリピン大統領選挙だろう。9日の投開票の途中集計では南部ミンダナオ島のダバオ市長がリードしているという。報道では「犯罪者は殺害する」など過激な発言を繰り返しているそうだから、恐らくトランプと同じタイプの大衆迎合政治家なのだろう。

トランプ型の「ダークサイドの覚醒」がフィリピンでも起きているのか、それとも単にフィリピンの民主主義が米国に似ているのか。いずれにせよ、この種の大衆迎合型政治は当面収まりそうもない。いずれ米国、欧州、中東、アジアで既存のエスタブリッシュメント優位の政治に地殻変動が起きるだろう。

 

○欧州・ロシア 

欧州に大きなニュースはないので、先週の日露首脳会談について一言。今週木曜日の産経新聞のコラムで、安倍首相の一連の発言は「日露関係が新たな次元に入ったことを示唆しており、紆余曲折はあろうが、ロシア側の対応次第で今後本格交渉が始まる可能性もある」と書いた。時間があれば読んでほしい。 

〇東アジア・大洋州

フィリピン大統領選挙については冒頭触れたので、それ以外に一言。目立たないが11日から14日までクウェートのジャービル首相が訪日する。過去に二回公式訪問しているが、今回首相としての初めての訪日だ。第二次安倍内閣で湾岸アラブ首脳との接触が増えたような気がするが、それでも回数は意外に少ない。

〇中東・アフリカ

9日にフランスがトルコ、サウジ、カタル、UAEの外相を集めてシリア問題につき会合を主催する。フランスもなかなかやるではないか。但し、シリア問題に対する関係国の努力はまだまだ足りない。このままではシリア国民があまりに可哀そうだと思う。 

○アメリカ両大陸

トランプ候補が共和党の大統領候補に事実上指名された(presumptive nominee)と報じられるようになって久しいが、共和党内部のしこりは解消するどころか、これから分裂に向けて動き出しそうな勢いだ。トランプ候補が理解していないのは、米国の大統領選挙の年は大統領選だけでなく、各州知事選、上院・下院議員選があること。

 

このままでは共和党は大統領選に敗北するだけでなく、上院の虎の子の過半数を失いかねないのだが、このことがトランプには分からない。下院の方は選挙区割りが固定化しているので上院ほど悪影響はないというが、下手すると共和党は現在の上下両院での優位を一気に失う可能性がある。その日は米共和党の命日となるだろう。

〇インド亜大陸 

特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

 


この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表

1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。

2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。

2006年立命館大学客員教授。

2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。

2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)

言語:英語、中国語、アラビア語。

特技:サックス、ベースギター。

趣味:バンド活動。

各種メディアで評論活動。

宮家邦彦

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