[野田万起子]新将命氏に聞く・企業のトップリーダーに必要なもの〜「知識」を「見識」に高め「見識」に決断力と断行力が加わった「胆識」を備えたリーダー人財を育てるセルフイノベーション
野田万起子(インクグロウ株式会社 代表取締役社長)
今回は「トップリーダーに必要なもの」をテーマに書いてみたいと思います。
新年早々に月刊誌の対談でお会いした新将命さん(株式会社国際ビジネスブレイン・代表取締役社長)から、素晴らしいお話を伺うことができました。新さんは「経営の教科書」の著者で、その経歴はシェル石油、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップ などで社長職を3社経験されたグローバルリーダーです。
中小企業の経営とは少しかけ離れるのかと思っていましたが、経営者の仕事である「経営戦略の策定と人材育成」のテーマは会社の規模は関係ないとつくづく感じた対談でした。まさに、「企業は人なり」と言われるとおり、企業の成長には、経営理念と戦略に基づき、トップ自らが情熱と方向性を示し、人間力(マインド)と仕事力(スキル)を磨きあげる「自分づくり」の取り組みが欠かせない。
対談では、「知識」を「見識」に高め、「見識」に決断力と断行力が加わった「胆識」を備えたリーダー人財を育てる セルフイノベーションを説く新将命社長とトップリーダーの条件や経営トップの「自分づくり」について語りました。
新さんは、そもそも「企業にとって人材とは何か」ということについて、
企業の戦略を達成するための最も重要な経営資源が「人材」であり、企業が持続的に成長していくためには、理念と戦略を明確に概念規定した上で「我が社が求める人材像」を定義し、社内で共有する基礎工事が必要
であるとおっしゃいます。
では、人材論の前提となる理念と戦略は何かというと、「理念=こんな会社にしたい」というビジョンであり、目指すべき“あらまほしき理想像“である。戦略=理念に沿って行う事業活動の「優先順位」を決め、経営にメリ・ハリを 効かせる「経営資源の最適配分」である。その上で戦略を成し遂げるために、どのような人材が必要かを決め育成していくことが重要なのです。
一方で、組織を束ね、統率していくリーダーに必要なことは2つ。
一つは、強い「情熱」がトップリーダーに求められる一丁目一番地の条件。 二つ目は「方向性」の明示。方向性は「企業理念+目標+戦略」の3つからなり、分りやすく言うと、「いま、どこだ」で自社の現状を認識、共有し、「どう、なりたいか」で概念的な理念と計数的な目標を設計し、その理念と目標を達成するために「何をどうやる」かの事業計画を実行に移す。何をやるかの戦略を立案し、どうやるかの戦術を展開して、その結果として「どうなった」を検証、評価することが大切だということです。
またリーダーの自己研鑽の手段として3つを教えていただきました。「座学」と「師を持つ」ことと「修羅場経験」です。
「座学」は経営の原理原則を体系的に勉強すること。また、経営には必ず困難や窮地に遭遇する時があるので、困った時に心の支えとなる知恵や勇気を与 えてくれる「師(メンター)」を持つこと。3つ目の修羅場体験とは、結果責任を伴った修羅場をくぐる難しい仕事を経験することで、仕事力(スキル)も経営マインドも磨かれるということです。この3つで人は必ず伸びる。経営者は率先垂範して、こうした自分づくりの意識と機会創出を心掛けて欲しいとのメッセージをいただきました。
トップリーダーは、見識に決断力と断行力が加わった胆識の持ち主でなければ、結果責任を果せません。事業環境の変化の激しい今こそ、胆識マインドを持つトップリーダーの育成が必要な所以でしょう。
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【プロフィール】
野田万起子(のだ・まきこ)インクグロウ株式会社 代表取締役社長、公益社団法人経済同友会、正会員 一般社団法人日本展示会協会 理事
昭和45年8月、静岡県生まれ。東京国際大学 経済学部卒。米国オレゴン州TIUアメリカ校卒。 平成5年、株式会社ベンチャー・リンク入社、平成16年 同社(東証一部上場)執行役員に就任。平成22年 同社取締役に就任。平成23年 インクグロウ株式会社 代表取締役社長に就任(現職) 金融業界分野で20年以上、全国の地域金融機関への支援業務に携わる。地域金融機関と一緒に、中小企業の活性化に向けたビジネスマッチングの取り組みを中心に、取引先の経営相談から、金融機関の職員研修など幅広く行う。