[堀尾藍]国際教育協力は「援助を受ける側」からみれば内政干渉となる可能性さえある〜ザンビアの教育事情から見る「歴史・政治・環境」などのファクターを精査した協力内容吟味の重要性
堀尾 藍(アフリカ研究者)
世界三大瀑布の一つビクトリアの滝があるザンビアは、1000~1350mの高原地帯で、73以上の民族が居住する。このような環境にあるザンビアには9つの州(Province)があり、それらは中央州(Central)、コパーベルト州(Copperbelt)、東部州(Eastern)、ルアプラ州(Lapula)、ルサカ州(Lusaka)、北部州(Northern)、北西州(North-Western)、南部州(Southern)、西南州(Western)からなる。そして、この9つの州の各主要民族の言語を国語として学ぶ。このことが教育格差の要因の一つとされている。
ザンビアにおける小学校は大きく4つに区分することができる。それは①国立小学校 ②私立小学校、③コミュニティースクール④宗教関係によって設立された小学校、である。小学校の入学年齢は7歳で、初等教育は7年間実施される。ザンビアの教育制度は、初等教育7年(基礎教育)、中等教育5年(前期2年、後期3年)であったが、現在は基礎教育9年(Basic School)、中等教育3年という制度を実施し、2005年までに初等教育(1年生~7年生)を完全普及させ、2015年までに基礎教育(1年生~9年生)を完全普及させることが目標に掲げられている 。
アフリカの教科書は、旧宗主国で印刷をすることが多く、ザンビアでも旧宗主国であるイギリスが教科書を印刷し、援助機関等を通してザンビアの各学校で配布されている。しかし、学習内容が自分達の生活との関係性が低ければ、保護者、地域住民らが子ども達を学校に積極的に通わせない。そのため、就学率の低下への要因となってしまう。
以前の国際教育協力は、就学率、学校数、児童生徒数、教育数、といった教育の量的側面に重点を置いていたが、近年は、教育の目標、指導方法、学業成績、学校経営等、教育の質に重点を置く傾向にある。しかし、どちらか一方が重要というのではなく、双方が重要であると考える。こうした中、日本の教育協力は、理数科教員の派遣といった教授法に重点を置いてあり、教育の質向上に一定の配慮をしている。しかし、それだけでは十分とは言えず、どうすれば現地のニーズと合致した教授内容になるか、更に考える必要がある。
「教育」とは国家にとって非常に重要な役割を持っており、国民形成の重要な鍵となる。国際教育協力は、援助を受ける側からしてみると内政干渉と受け取られる可能性を否定できないため、現地の歴史、政治、環境といった様々なファクターを精査した上で、協力の内容を吟味し実施することが大切だ。
(Livingstoneに近い農村地域の学校で調査を実施する筆者)
【参考文献】
- 野田久尚「第8章 教育・人的資源開発」,『南部アフリカ援助研究会・報告書‐ザンビア・現状分析編』(JICA・2000年)
- 浜野隆 「第4章Education For All運動と1990年代アフリカにおける初等教育」,『教育開発の現在』,米村明夫 編著「世界の教育開発-教育発展の社会的研究」(明石書店,2003年)
- 堀尾藍「修士論文・ザンビアにおけるコミュニティースクールによる基礎教育 への取り組み -現状と展望-」(明治学院大学大学院国際学研究科、2007年)
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