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.国際  投稿日:2014/1/22

[堀尾藍]多民族国家でありながら団結心の強いザンビア共和国の『農業フェスティバル』


堀尾 藍(アフリカ研究者)

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アフリカ以南に位置するザンビアでは年に一度、国民の祝日である「農業の日」の週に農業フェスティバルが首都ルサカ(Lusaka)において開催される。筆者はザンビア人のホストファミリーと一緒にこの農業フェスティバルに連日足を運んだ。

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このフェスティバルに参加するには、先ず、入場券を購入する必要がある。購入した入場券を提示し(筆者の場合、家族と見なされているため、ホストファミリーが出してくれる)、中に入ると、大勢のザンビア国民が参加し、熱気で溢れていた。ザンビアの国の標語は「One Zambia, One Nation」である。ザンビアは多民族国家でありながら、団結心を持ち、また、「国民のその標語への思い」と「農業フェスティバルに対する国民の関心の高さ」が比例している。

このフェスティバルの目的は、大きく4点あり、それは、

  1. ザンビアにおける農業技術の促進
  2. ザンビア国民の高い生活水準への促進
  3. 新しい農業技術の見本市、及び農業関連企業の紹介
  4. 各地域や州における農業関連団体に対する奨励

である。

農機の展示、農業関連企業の自社紹介、肥料や野菜の販売等があり、JICAの協力隊が派遣されている農業専門学校や農学部による品評会もある。また、家族連れも楽しめるようにアイスや飲み物の屋台、遊園地や動物園もあり、乗馬もできるし、ライブ、組み体操といったイベントも開催される。

2日目にフェスティバルに訪れた際は、調査用の衣類ではなく、日常的な服を選択した。すると、なぜか、その場で出会った大勢のファミリーやザンビア人達に「一緒に写真に入って下さい」と声をかけられた。そんな中、ふと気づくと、私の背後で、とある男が、私の連絡先を教えてくれたらお金を払うよ、とホストシスターと交渉しているではないか!今にも教えそうな風情の彼女。ザンビア人は、商売に対しとても積極的であるため、こんな場合、気を付けないととんでもないことになる。

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(左)企業によるブースも出店される(右)乗馬経験なども出来る

 

さて、ホストファミリーと家路に帰ろうと出口に向かうと、突然、大勢のザンビア人による歓声が響き、皆が両手を上に上げ始めた。私は驚き、歓声の方に目を向けると、何とそこには初代ザンビア大統領のケネス・カウンダ大統領(Kenneth David Kaunda)がいた!しかし、群集によって直ぐに姿が見えなくなったが、それでも、群集の移動によって、どの辺りにドクター・カウンダがいるかは分かった。

カウンダ初代大統領は、ドクター・カウンダという名称で親しまれていた。カウンダは、ザンビアが北ローデシアと呼ばれていた1960年に統一民族独立党(UNIPを結成し、1962年自治政府の首相となり、1964年にはザンビアの独立と共に大統領へと就任した。カウンダの息子は父が偉大過ぎてか、問題児として新聞を賑わすことも多い。

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(左)会場に動物園も(中央)昭和の日本を感じさせられる(右)ライブ会場も設置される

 

実は、筆者はこれ以前に日本で開催された国際シンポジウムにて、この初代大統領と直接話す機会があり、アフリカ人にとって大切な歌を教えてもらったことがある。筆者にとって、研究地ザンビアの初代大統領から直接学んだことはシンポジウムのパネリストの現地報告よりも濃く、そして大切な思い出である。今でも、初代大統領から頂いたメモ用紙に書いた歌詞を大切に保存している。

この農業フェスティバルに参加して思ったのは、日本の農業技術をザンビアに伝えることによって、ザンビアの可能性を引き出せるのでは、ということだ。農業の発展には、生産した作物を運搬するためのインフラ整備が必要不可欠だ。しかしそれにも増して、日本の青年海外協力隊やJICA専門家による農業技術の移転により、ザンビアの農業を発展させ、野菜の生産量を増大させることが重要だ。その結果、雇用や食糧自給率が高まることが期待される。いずれは、ザンビアの農業従事者が農産物を加工し、付加価値を付けることによって、被援助国ではなく、輸出国に生まれ変わるだろう。

ザンビアが一日も早く日本の対等なビジネスパートナーとなること強く望む。

【参考資料】AGSZ Agricultural & Commercial Society of Zambia|http://www.acsz.co.zm/

 

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