[堀尾藍]アフリカ・ザンビア共和国のタクシーには要注意!「白いタクシー」は盗難車で、しかも飲酒運転の危険性
堀尾 藍(アフリカ研究者)
アフリカでは、53の国家及び地域がAU(African Union:アフリカ連合)に加盟している。私達は最初に「アフリカ」と聞くと何を思い浮かべるか。一般的には貧困、栄養失調、発展途上国、奴隷貿易、HIV/AIDSの蔓延、といったネガティブな言葉を浮かべるであろう。しかし、実際にアフリカに訪れると、負の固定観念が払拭される。なぜなら、アフリカ人は、全身で喜びや悲しみを表現しながら、生き生きと生活をし、まさに「動」という言葉が似合う。そして、どの子ども達も目をきらきらと輝かせているからだ。
アフリカの面積は3020万平方キロメートあり、この広大な土地には人口約10億人の人々が居住している。アフリカは、大きく北アフリカ、西アフリカ、中部アフリカ、東アフリカ、南部アフリカに区分され、気候も高温多湿な地域、サバンナ地域、砂漠気候域、地中海性気候、と様々である。
1960年、アフリカ諸国の多くが宗主国から独立したため、この年は「アフリカの年」と言われる。アフリカは資源が豊富なため、紛争が多い。しかし、これは植民地時代の負の影響によるもので、アフリカの国境線が民族や地形を無視して引かれたためである。
私の研究地であるザンビアは、面積が752.61千平方キロメートル、人口は1,347万人あり、人口増加率は4.2%になる(世界銀行・2011年)。首都はルサカにあり、トンガ系、ニャンジャ系、ベンバ系、ルンダ系の73民族以上が居住する。
私が最初に南部アフリカに位置するザンビアに訪れたのは2004年である。それから、3度訪れているが、毎回新しい発見があり、驚きの連続である。私は現地の住民の声を直接聞くことを前提としているため、必ずホームステイを選択している。また、滞在期間も1回につき1ヶ月以上は現地で生活をする。長期滞在になると、ホストファミリーと喧嘩をしたり、泣いたり、笑ったりと忙しい。
アフリカの人達は喜怒哀楽が明確で、一言で表現すると、「純粋な人達」である。
(写真1)現地住民に聞き取り調査を行う筆者(写真中央)。
さて、アフリカの現状と魅力ついて書いてゆくこの連載。第一回目の今回は、知らないと怖い思い(?!)をするザンビアの「タクシー」について書いたみたい。
ザンビア共和国の公式タクシーは水色に塗装されている。しかし、スーパーの前に停留してあるタクシーの中には車体が白色のものがあり、これが危険である。なぜなら、この車は盗難車で、運転手が飲酒運転している可能性がかなり高い。一度、筆者も「安くするから!」と言う運転手の一言に負け、調査地である小学校まで約30分乗車したことがあるが、運転手の手にはお酒の瓶があり、運転手がそれを時々飲み、怖い思いをしたことがある。私は、運転手の後ろの席で、調査票の用紙を強く握り締め、その手には汗をかいていた。
「他の小学校にも行くなら、俺が一日運転手になるよ」と運転手に言われたが、もちろん、丁重にお断りをした。アフリカは大好きだが、運命の人と出会うまでは死にたくない、と考えたためである。
アフリカではこのような経験が日常的にあり、どこか懐かしい気持ちも感じさせられる。ザンビアでは1日1ドル以下で生活をしている国民の割合が7割と高い。しかし、人々は人情味が溢れ、陽気で、いつも元気を分けてくれる。早朝になると、人々は徒歩や乗り合いバスで職場や学校に出掛け、日が沈む前に家路に向かう。インフラ整備が不十分だからこそ、心の豊かさが大切にされている、と私は考える。
(写真2)公式タクシーは車体が水色(筆者撮影)
アフリカ学の研究者達が口にするのは「アフリカの水を飲んだ者はまたアフリカに戻る」である。そして、その水を口にした私自身も、アフリカに魅了された一人である。
この連載では、魅力溢れるアフリカ、特にザンビアについて紹介していきたい。
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