[古森義久]米バージニア州の教科書で「日本海」と「東海」の併記決定の背景にある韓国ロビーの反日パワー〜全米人口1%未満の韓国系住民が、なぜ州や市を動かせるのか?
古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)
アメリカの首都ワシントンのすぐ南に広がるバージニア州で、公立学校の地理教科書では、「日本海」の名称に並べて「東海」という名を表記するという新方針が2月上旬、決まってしまった。明らかに韓国の意向を体した措置である。日本の立場を後退させる意図が露骨だともいえる。州議会の決定により州政府がその表記を実行することになる。
西海岸のカリフォルニア州や東部のニューヨーク州、ニュージャージー州ではグレンデールやクパティーノという中級都市で慰安婦の像や碑を設置する動きが起きている。日本軍の従軍慰安婦を「性的奴隷」だったとして、日本側の責任を追及するわけだ。
アメリカでのこうした最近の動きは明らかに韓国系勢力による反日運動だといえよう。アメリカという日本にとっては唯一の同盟国、そして超大国を利用して、日本への非難をぶつけるのだ。だから運動自体は反日と呼んでよいだろう。
アメリカでのこの種の反日運動は韓国系住民たちが本国政府と連帯して進めている。表の主役はあくまで合計170万人とされる韓国系アメリカ人たちである。 私はその韓国パワー、韓国ロビーのからんだ出来事を長年、ワシントンから報道してきたが、その韓国系の動きが最近、とくに反日の様相を強めてきたのを機に、その実態を「中・韓『反日ロビー』の実像」(PHP研究所刊)という単行本にまとめて、出版した。
そのなかで書いたことだが、アメリカの韓国系住民の200万たらずという人口は全米のわずか1%にも満たない。それでもなお各地の州や市を動かして、日本を貶めるような措置、韓国の主張を拡大する措置を取らせてしまう。それはなぜなのか。理由はいくつかあげよう。
まず第一は、在アメリカの韓国系住民がこと反日の動きに関しては韓国政府の意向を受け、本国とぴたりと一体になっていることである。韓国政府の政治パワー、資金力、組織力を在米住民たちが利用できるのだ。
第二には、アメリカの韓国系住民はロサンゼルス、ニューヨーク、ワシントンDCという主要都市圏に人口を集中させていることだ。グレンデール市とかバージニア州という地方自治体の内部では韓国系住民は数も多く、所得も高く、当局に働きかけるパワーも強いのだ。
第三は、アメリカの行政や立法のシステムが少数でも力を集中できる集団からのプレッシャーには弱いことである。韓国ロビーは少数でも、政府や議会の特定部分に焦点をしぼって、集中的なロビー工作をかければ、政府・議会の全体を動かせるようになる。
いま、日本側の私たちがアメリカ各地で目撃している韓国パワーの対日攻勢はそんなメカニズムに立脚しているのだ。
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