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.政治  投稿日:2017/6/7

都議会自民党公約分析① 東京都長期ビジョンを読み解く!その46


 西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

「西村健の地方自治ウォッチング」

【まとめ】

・都議会自民党公約を発表、個人住民税減税などを打ち出す。

・横田基地返還などの公約も

・しかし、財源や根拠などはどこにあるのか、心もとない。

 

■「東京の未来責任を果たす」

自民党の都議会議員選挙公約発表された。やはり長年、都議会で与党を占めてきただけあって、それなりのものを出してきたと評価している。正直驚いた。ある世論調査で、33%の支持率を誇るだけあり、また、地域の声を拾い上げる地道な活動を続けている議員さんたちが多いだけあって、さすがの公約である。

特徴的なのは個人都民税を10%減税、事業所税50%減額、虚弱予防(フレイル)対策などを出してきたこと。また、緊急提言として:

・「豊洲市場への早期移転を実現~科学的・法的に安全な新市場へ」

・「オリンピック・パラリンピック大会の準備を加速~このままだと開催が危うい」

・「全国と連携し日本経済を牽引~政策減税等で日本全体を元気に」

 と冒頭で強調されている。

「オリンピック・パラリンピック大会の準備を加速~このままだと開催が危うい」では、「全国と連携し日本経済を牽引~政策減税等で日本全体を元気に」として「オリンピック・パラリンピック大会成功は国際公約、速やかな自治体関係者間協議の約束を守り、信頼を重ね、全てのオリンピック施設整備を推進」として、具体的には「東京2020大会を起爆剤とした、日本全体の景気浮揚。全国への経済波及効果は32兆円」「東京2020大会を機に、日本の文化と技術を世界へ発信」という経済界の人や景気が大事だと思う人にとっては諸手を上げて歓喜したいくらいの内容だ。フツーの都民感覚で普通に読んでいけば、全体的に賛同してしまうものである。

また、「経済政策、政策減税、中小企業対策を行い、経済波及効果約6,000億円と4万人の雇用を創出」というのは壮大なスケールである。東京を中心に日本経済が復活する!・・・はず。

せっかくなので、今回から数回にわたって検証していきたい。

 

■都議会自民党支持層らにとっては素晴らしい提案

なかなか面白い政策を提示しているのでいくつか紹介しよう。

◎結婚、妊娠、出産、子育てに至る、それぞれのステージで切れ目のない支援を実施

◎就学前教育の無償化

◎子育て支援や待機児童ゼロへの取組みを加速化

◎多様な子育て需要に対応する幼稚園の預かり保育の充実、保育人材の確保・育成・定着を推進

◎周産期医療体制を更に充実し、出産前後の母親と子供を守る体制を強化

◎子供のための放課後の居場所づくりを推進

◎経済活力を引き出し、中小企業を対象に雇用を創出させる事業所税50%減税へ

◎都政改革の効果を還元、個人都民税10%減税へ

◎非正規雇用の環境改善、賃金水準全体の底上げ

◎都議会改革の成果を還元。 個人都民税10%減税へ

◎幼稚園への支援の強化、預かり保育の充実

◎再生可能エネルギーの利用促進によるCO2削減 (2030年までに30%減)

◎横田基地の返還に向けた段階的な民間開放

相変わらずの政策も多いものの、上記は意外なものもあって、なかなかやるなあと素直に思ってしまった。特に、日米安保に対して疑問を投げかけるというのは、国政を考えるとなかなか難しいと思うが、日本政府の方針に背いて横田基地問題を公約に入れたところは本当に素晴らしい。包括的網羅的な内容ではあるが、小池都政に目配せをしつつ、利益団体を視野に入れた手堅い戦略である。政治とはこういった利害闘争なので、当然ではある。

 

■財源・根拠・基準はどこ?

しかし、上記を実現するとなると、どのような行政改革が必要なのか?というとどこにも書かれていない。

いや書かれていた!「都政改革の効果を還元」と。しかし、上記を実現するだけの行革を実現した記憶はないし、今後実現できるかというと心もとない。

また、CO2削減については「2013年度(速報値)の温室効果ガス排出量は 70.1百万t-CO2で、2000年度比13%増加している。」(環境基本計画P27)なか、いったいどのようにCO2を30%も削減できるのだろうか。というか、どこ基準なのだろうか。

どこ?どこ?どこ?とツッコミたくなるまさに「どこどこ政策」。申し訳ないが、専門家が読むとブラック企業の誇大広告としか読めないというのが正直な感想。「TOKYO自民党の政策力にご期待下さい」というキャッチコピーが行間にむなしく響く。

財源不足を記載しない「公約」など約束とは言えないので、その点は改善を求めたい。長年与党であったわけだし、実力を持った議員も多いのであるから、その責任は果たしてもらいたいというのが正直なところだ。もうちょっと頑張って欲しいので、応援を込めて次回は都議会自民党が誇る「実績」についてみていきたい。

【注意】上記あくまで私の意見ですのでご参考に。繰り返しますが、特定団体を応援する目的で記載していませんので悪しからず。


この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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