都議会自民党公約分析③ 東京都長期ビジョンを読み解く!その48
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
「西村健の地方自治ウォッチング」
【まとめ】
・都議会自民党の「実績」は支持団体向けアピールのようなものも。
・商店街活性化と五輪での「実績」には疑問符。
・「実績」の中には国の施策も。都議会自民の実績だという説明が欲しい。
■都議選は7月2日
選挙活動が本格化する中、今回も都議会自民党の選挙公約を見ていく。中には、数々の「実績」を誇っている。
何でこうした記述をしたのかと思いをはせると、
・支持者に過去の「恩」を思い出させる
・政権与党だった時に行ったことを「明確化」
・小池都政と比較して、自分たち自身の「正当化」
という効果があるのだろう。
中には、都議会自民党の有力な支持者向けのように感じられるものもある。特に、自民党支持者が喜びそうなものはこれ。
●三環状道路の整備‥‥首都高速中央環状線全線開通で、首都高の交通渋滞(渋滞損失時間)は約4割解消。この4年間で、鉄道の連続立体交差化の6事業が完成し、累計で踏切96か所を除却。
●島しょの情報格差解消‥超高速ブロードバンド整備促進
首都高の交通渋滞は確かに緩和した。首都高速中央環状線とは、首都高速都心環状線の外側に位置する環状線。外に道路作ればそりゃ多くの渋滞は解消するという当たり前のことだともいえるが・・・・。
●商店街は活性化してるのか?
全国の商店街はシャッター通り化している一方、まだまだ東京には商店街は残っている。若い商店主に頑張りも目立つ。とはいえ、どこまで支援すべきかは議論するべきところだろう。
●地域の活性化に全力‥‥新・元気を出せ商店街事業、地域の底力発展(再生)事業助成等、地域活性化への取組みを粘り強く継続。
地域の活性化の定義は?多くの商店が大手小売店のチェーン店になってしまっている現状をどう考えるのだろうか?
と疑問がわいてくる。
東洋経済の記事で武蔵小山商店街が紹介され、「東京都の商業統計調査で見ると、2002年から2014年の12年間でこの地域の商店街の売り上げはなんと2割弱減っている」
ということが指摘されている。通る人が買い物しなくなったというのがポイント。
確かに、アマゾンなどネットでの買い物、チェーン店の増大が影響しているのだろう。
この状況の変化の中、
【対象】商店街及び商店街の連合会、商工会、商工会議所
【補助】イベント事業、多言語対応事業、組織力強化支援事業
【補助割合】上限はあるが1/3~5/9の補助率
という事業がこのままでいいわけはないだろう。
しかも、大事な考え方は、補助を出すことが目的になっていないかということだ。的確な補助によって商店主の後継者対策が解決するとか、どのような「結果」が誘発されたかが大事なのである。
ちなみに、この事業の予算額は27年度、28年度ともに37億円だ。(平成28年2月「平成28年度主要事業」P188)。
■2020オリ・パラ
そして、東京オリンピック・パラリンピックについては、自民党の公約にはどう書いているのだろう。
■大会招致成功と大会経費2000億円削減‥‥ 2013年、ブエノスアイレスのIOC総会で東京が2020年開催都市に決定。新規会場の整備を再検討し、3か所の整備・中止等で、2千億円を削減。
大会招致成功は実績かもしれない。ここでは都民向けにもアピールを忘れていない。確かに立候補時の大会経費の見積は3500億円(東京都の負担は1538億円)と言われている。その後、2016年7月に2兆円超まで膨らんだ。
ちなみに、東京都は3つの会場の建設中止などで一時は4500億円に膨らみ、そこから約2000億円削減、2015年4月時点で2241億円。その意味で事実である。
忘れてしまいがちだが、2014年、舛添知事がバスケットボール、バドミントン、セーリングの3会場の建設中止を表明したのだ。
これは書いてもいい。
その後、都政改革本部オリンピック・パラリンピック調査チームの報告書では、「都庁は地方自治法上、及び都民に対する説明責任の立場から、組織委の出費、投融資のあり方や経営全般のあり方(ヒト、モノ)を指導、監督すべき」という提言がなされているんですけどね。それはできたのか、疑問があるところである。
「実績」という言葉を辞書で引くと、実際に現れた功績とある。公約に実績を書くのはいいし、都議会自民党のお陰のものも多いが、その「理由」も教えて欲しい。なぜなら「訪都外国人観光客が4年で倍増、1千万人超に」と書いてあるように、国の観光政策のお陰のように思われるものもあるからだ。
都議会自民党に期待する。
【注意】上記あくまで私の意見ですのでご参考に。繰り返しますが、特定団体を応援する目的で記載していませんので悪しからず。
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この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者
経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家
NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。
専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。