[朴斗鎮]<北朝鮮・謀略情報に翻弄の韓日メディア>ガセネタに踊らされた辺真一氏は例外ではない
韓・日メディアがまたもや北朝鮮の謀略情報に乗せられたようだ。
韓国の自由北韓(北朝鮮)放送が3月2日付けで「軍人30人余りが自宅で出勤準備をしていた崔龍海(北朝鮮軍総政治局長)を連行した」との情報を流した。
自由北韓放送の金聖玟(キム・ソンミン)代表は、日本のテレビ局のインタビューにも答えて、次のように語った。
「2月21日の朝6時ごろに30人ほどの軍人がやって来て自宅で出勤準備をしていた崔龍海氏を連行していったそうです。信頼できる情報筋が『崔龍海氏が逮捕された』とはっきり話してくれた」
「現在崔龍海氏はひとまずのところ保衛司令部内に監禁されている。自らの職務を遂行できない状態だと言うことが複数の情報筋から分かった」(自由北韓放送・金聖玟 代表)
この情報に対してテレビ番組でコメントを求められた日本のコリアレポート・辺真一編集長は
「そうですね、意外な感もしますけどね。今回、情報が非常に詳細ですね。何時、どこで、誰によって連行され、いまどこに置かれているのかと。それも一回だけではなくて(2月)27日、28日、昨日(3月2日)と立て続けにこの種の情報が入ってきて複数によって確認されてきています。調べてみますと、確かにこの崔龍海氏は2月16日の金正日総書記の誕生日の際の参拝を最後に昨日現在約2週間表に出てきていない。さらに調べると・・・1月20日から昨日まで40日間たった1回(朝鮮日報報道で1・2月は7回)しか出てきていない。何か起こったとの予感は感じます」(コリアレポート・辺真一 編集長)
と答え、さらにコメントする中で「何かあったと感じる」とほぼこの事実を肯定した。
しかし、この情報がガセネタであったことは、早くも3月7日の労働新聞で明らかになった。金正恩の随行者筆頭に崔龍海の名前が出ていたからだ。
辺真一氏は、北朝鮮ガセネタ情報によく踊らされるようだ。過去にも、金正恩の母高英姫を高春幸(春行)と間違えたガセネタを信じ込んだり、韓国一般青年の写真を金正恩だとして大騒ぎした大誤報を信じてテレビで解説していた。今回またしてもガセネタに付き合わされている。
北朝鮮が情報閉鎖の国で謀略国家だからといってしまえばそれまでだが、そうであればこそ情報に接する慎重さが必要である。これは辺真一氏だけに限った話ではない。
特に公共の電波を扱うテレビ局には慎重さが求められる。北朝鮮情報はワイドショー化して視聴率を上げやすいかもしれないが、韓国の一民間団体が流した情報を大々的に報道し騒ぎ立てるのはいかがなものだろうか。熟慮する必要がある。
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【プロフィール】
1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。主な著書に、「北朝鮮 その世襲的個人崇拝思想−キム・イルソンチュチェ思想の歴史と真実」「朝鮮総連 その虚像と実像」など。その他論考多数。