「選挙制度改革自民党案を認めない」行田邦子参議院議員
「細川珠生のモーニングトーク」2018年6月30放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth 編集部(石田桃子)
【まとめ】
・自民党案は合区制度により立候補できなくなった現職議員の救済策。
・一票の格差問題は現行憲法下では合区制度を進めることによってしか改善できない。
・参議院選挙制度の議論より先に参議院の在り方見直すべき。
6月20日、国会の会期が7月22日まで延長されることが決定した。政府・与党は、IR法案・働き方改革法案・参議院の選挙制度改革法案の成立を目指している。今回は、参議院の選挙制度をテーマに、希望の党幹事長・行田邦子参議院議員に、政治ジャーナリストの細川珠生氏が話を聞いた。
細川氏は、参議院議員選挙における一票の格差を是正するために従来行われてきた検討に言及しながら、今国会で議論される与党案について、行田氏に考えを聞いた。
前回2016年の参議院議員選挙では、2015年の公職選挙法改正が適用された。その内容は、鳥取と島根、徳島と高知の合区を伴う「10増10減」。ところが自民党は、合区制度の解消を可能にする改正案を今国会に提出している。同時に、比例代表の改選定数の4議席増、拘束名簿式の一部導入、一票の価値が最も小さい埼玉選挙区の改選定数の2議席増を提案している。
行田氏は、参議院の「参議院制度改革協議会」の中の「選挙制度に関する専門委員会」において、昨年から十数回にわたって各会派・政党の代表による議論が行われていたにも関わらず、自民党案について一切言及がなかったことを明らかにしつつ、自民党案を以下3点において批判した。
1.「自民党案は、合区制度によって立候補できなくなった現職議員の救済策に過ぎない。」
2.「自民党案は、従来の定数減の流れに逆行している。」
3.「延長国会での拙速な議論は、2015年に成立した改正公職選挙法の条文に反している。」
1.「自民党案は、合区制度によって立候補できなくなった現職議員の救済策に過ぎない」
従来、参議院議員選挙の非拘束名簿式比例代表制では、各党の当選者は、個人名得票数の多い順に決められた。しかし、今回の自民党案が成立すれば、一部名簿式が導入され、名簿の上位に特定枠が設けられることになる。大きな政党であれば、特定枠の候補者は当選がほぼ確定する。行田氏はこれを、「合区制度によって選挙区選挙に立候補できない現職議員を比例代表制で優先的に当選させる狙いがある」と述べた。
さらに行田氏は「特定枠が、合区制度で削られた議席数と同じ2議席と考えられることからも、その狙いは明らかだ」と述べた。特定枠の数について法案に記載はないものの、同時に比例代表の定数4議席増が提案されていることから、(3年ごとの各選挙で)2議席分と考えられるという。
2.「自民党案は、従来の定数減の流れに逆行している」
従来、選挙制度の改正においては、一票の格差是正のための定数削減が行われてきた。2015年の法改正でも、人口比に基づいた定数設定が進められた。しかしその改正法に基づいて行われた2016年の参議院議員選挙の一票の格差は3.07倍。「最高裁が違憲判決、違憲状態判決を出していないからといって、十分な改善がなされたとは言えない。」と行田氏は述べた。さらに行田氏は、「選挙制度改正において合区制度は完璧ではないにせよ議論し尽くした結果であり、これを進めて行くことが現行憲法の下でできる最良の方法だ。」と述べ、自民党案はこれに逆行しているとの考えを示した。
3.「延長国会での拙速な議論は、2015年に成立した改正公職選挙法の条文に反している」
行田氏は、2016年の参議院議員選挙に間に合わせる形で成立した改正公職選挙法に、2019年の参議院議員選挙に向けて参議院の在り方を必ず見直すという附則(注1)が含まれていることを指摘。十分な議論のないまま延長国会で成立を急ぐことはこの条文に反しており、「順序が逆になっている」と述べた。
細川氏が与党の数の力で法案成立を押し切られてしまうことに対して懸念を示すと、行田氏は、「批判するばかりでなくしっかりと対案を示し、国会という開かれた場で議論を行って、国民が問題意識を持つことを促すことが必要だ。」と述べ、国会での議論に意欲を示した。希望の党は、すでに対案を作成済みだが、希望の党所属の参議院議員は3人。発議に必要な21人を集めるために、さらに賛同者を募るとした。
細川氏は、行田氏が、定数増となる該当選挙区・埼玉選挙区の選出議員であること、参議院議員であるにもかかわらず参議院の役割の見直しを訴えていること、議員ならば議席を確保したいのが本心だと思うが、それにも関わらず一票の格差是正に取り組んでいることに注目して、行田氏に期待感を示した。
注1)
「公職選挙法の一部を改正する法律案」(平成27年8月5日公布)より抜粋
「平成三十一年に行われる参議院議員の通常選挙に向けて、参議院の在り方を踏まえて、選挙区間における議員一人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとする。」
(参考:参議院HP「議案情報」http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/189/meisai/m18907189011.htm)
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2018年6月30日放送の要約です)
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【以下を修正いたしました】 2018年7月4日14:40
(修正前)
IR法案・働き方改革法案・参議院の法案の成立を目指している。
(修正後)
IR法案・働き方改革法案・参議院の選挙制度改革法案の成立を目指している。
(修正前)
合区制度の解消を可能にする改正改憲案を今国会に提出している。同時に、公職選挙法改正法案では、比例代表の改選定数の4議席増、拘束名簿式の一部導入、一票の価値格差が最も小さ低い埼玉選挙区の改選定数の2議席増を提案している。
(修正後)
合区制度の解消を可能にする改正案を今国会に提出している。同時に、比例代表の改選定数の4議席増、拘束名簿式の一部導入、一票の価値が最も小さい埼玉選挙区の改選定数の2議席増を提案している。
(修正前)
国会本会議での議論に意欲を示した。
(修正後)
国会での議論に意欲を示した。
(修正前)
細川氏は、行田氏が、定数増となる法案の該当選挙区・埼玉選挙区の選出議員であること、参議院議員であるにもかかわらず参議院の役割の見直しを訴えていること、議席を確保したい議員ならば議席を確保したいのが本心だと思うが、それにも関わらずとしての本心に逆らって一票の格差是正に取り組んでいることに注目して、行田氏に期待感を示した。
(修正後)
細川氏は、行田氏が、定数増となる該当選挙区・埼玉選挙区の選出議員であること、参議院議員であるにもかかわらず参議院の役割の見直しを訴えていること、議員ならば議席を確保したいのが本心だと思うが、それにも関わらず一票の格差是正に取り組んでいることに注目して、行田氏に期待感を示した。
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。