.国際  投稿日:2018/8/26

貧弱な韓国系米人慰安婦デモ

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古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視 」

 

【まとめ】

DCの日本大使館前で韓国系の人ら18人が慰安婦問題で抗議活動。

・米での慰安婦問題追及の中核に中国の工作員とされる人物存在。

・日本も米でのこうした活動に対し適切な対応必要。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトでお読みください。】

 

アメリカの首都ワシントンで慰安婦問題について日本に抗議する韓国系の人たちの抗議活動を目撃した。日本大使館前での出来事、8月22日だった。この抗議活動を目前にみて感じたことをいくつか報告したい。

 

ワシントンにある日本国大使館から8月21日に以下のような通報がメールで届いた。いわゆる在留邦人あての一般のお知らせである。

 

<在アメリカ合衆国日本国大使館

○8月22日(水)に当館前において当館に対する抗議活動が実施される見込みです。

正午から午後1時まで、当館前マサチューセッツ通りの歩道上において、当館に対し慰安婦問題に係る抗議活動が実施される見込みです。

不測の事態が発生する可能性は皆無ではありませんので、ご来館時にはご注意ください。

なお、当館は通常通り開館します。>

 

以上のごく簡単なメールだった。だが日本大使館への抗議というのは珍しい。そのことを大使館自身が在留日本人や日本のメディアに事前に知らせるのは、もっと珍しい。だから「おやっ」と思った。

 

そのうえに私は「慰安婦」という言葉が気になった。ちょうどこの時期に慰安婦問題についての記事を書いたばかりだったからだ。その記事は「アメリカ司法当局から中国スパイだと断じられた中国系米人が長年、上院議員補佐官として働き、いまは慰安婦問題で日本を糾弾する在米民間組織の事務局長になっている」という趣旨だった。

 

写真)ラッセル・ロウ氏 ダイアン・ファインスタイン米上院議員事務局長(当時)写真左 2011年9月11日 

出典) facebook :  CSUEB

 

この記事は日本ではかなりの反響を呼んだ。慰安婦問題で日本を非難する韓国や中国の活動家たちにとってもいやなニュースだっただろう。アメリカでの慰安婦問題追及は韓国系勢力が主体にみえるのに、その中核には実は中国政府の工作員とされる人物が存在していたという事実は従来の日本非難勢力にとって都合のよいはずがない。

 

その直後にワシントンの日本大使館への慰安婦問題での抗議だというのだから、当然、因果関係についても疑問を抱いた。しかしながらこの抗議活動は私が記事を書く前から計画されていたことがわかった。主催はワシントンに本拠をおく韓国系組織「ワシントン慰安婦問題連合」の関連団体とされていた。

 

百聞は一見にしかず。である。とにかくその抗議活動を見にいった。私自身が22日の正午前から日本大使館前に出かけてみたのだ。

 

アメリカの首都ワシントンは世界の政治の顔でもある。言論や表現の自由が保証されていることに合わせて、なんといってもアメリカは超大国である。その首都での出来事は全世界に伝わりやすい。特定の国家に特定の抗議がある側にとっては、その超大国の首都で自分たちの主張を宣伝することはグローバルな効果が期待できるのだ。

 

慰安婦問題もまさにその一例である。日本を糾弾する側は慰安婦問題には直接に関係のないアメリカで慰安婦問題を宣伝すれば、アメリカを味方につけることができるかもしれない。ワシントンでの出来事にはいつも国際的な注意が払われるから、「日本の非」を世界に広げるには便利な舞台となる。

 

日本大使館のあるマサチューセッツ通りは「大使館通り」とも呼ばれる。文字どおりに多数の国の大使館がずらりと並んでいるのだ。イギリス、韓国、イタリア、ブラジルなどの大使館が目立つ。そうした大使館の前にときどき人が集まり、その国の政府に抗議をするという光景はこれまでもよく目にしてきた。ただし日本大使館への抗議は近年、記憶になかった。

 

しかも日本大使館が事前に警告とも呼べる通知を発信するのだから、かなりの規模の抗議になるのだろうと、予測していた。だから私も緊張気味で現場に出かけた。ところが現実は異なっていたのである。

 

正午となっても日本大使館前には館員らしき数人が入口を背にして立つだけで、道路に人影がない。5分、10分・・・正午過ぎ20分ほどになって、やっと数人の男女が大使館前の歩道に集まってきた。Comfort Women という文字が入った黄色いTシャツを着ている若者もいた。やがてこの集団は「慰安婦問題で日本に抗議する」という意味の言葉が書かれたプラカードなどを出して、女性リーダーが抗議の言葉を述べ始めた。小さな声なので、その内容はほとんどわからない。

 

こんな「抗議」が20分ほど続いた。私は近寄ってまず集団の人数を数えてみた。18人だった。その全員がアジア系にみえた。ほとんどが若い男女だった。プラカードからみな韓国系であることが明白だった。抗議活動と呼ぶにはあまりに小さく、貧弱で、元気のない集まりだった。

 

リーダーの号令で最も明確にわかったのは「Apologize(謝罪せよ)」という言葉だった。「日本よ、謝れ」というわけだ。抗議の言葉としては、これまたお粗末である。日本政府はもうさんざんに謝っている。謝罪をしすぎた歴史は明白である。いまさらなにを、どう、謝れ、というのか。

 

そもそもこの8月22日になぜこの活動をするのかも不明だった。8月は15日が日本の戦争が終わった日、朝鮮半島の統治も終わった日だから、それに合わせての8月の抗議なのか。とにかくこの日のアメリカの首都ワシントンの日本大使館への慰安婦問題での抗議活動というのは、以上ですべて終わりだった。さてそこから私が教訓のように思えたのは以下の諸点だった。

 

まず第一は、アメリカではまだ韓国系勢力が慰安婦問題を使って、日本への抗議を続けるという現実があるということだ。日韓外相会談での慰安婦問題の終わりの合意はアメリカでも空疎だということだろう。そこには韓国政府の意向が明らかに感じられる。

 

第二には、その抗議の規模の小ささ、参加人員の少なさだった。アメリカでの韓国系だけによる日本糾弾というのは、こんな貧弱で、穏やかなのだといえよう。アメリカでの慰安婦問題というのはやはり中国系勢力があってこそ勢いを得るという実態を目撃したように思えた。

 

第三は、日本の適切な対応が重要だという点である。そもそも今回の抗議活動もこんな時期にこんなふうに起きるとは、日本側では直前まで予測できなかった。アメリカという舞台でのその種の反日の動きはいつでもありうると考え、それに対する効果的な対応を準備しておくべきだろう。

 

トップ画像)在アメリカ合衆国日本国大使館

出典)Photo by Eamuscatuli

 

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この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「危うし!日本の命運」「中・韓『反日ロビー』の実像」「トランプは中国の膨張を許さない!」など多数。

古森義久

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