「日本、独立自尊の姿勢を」山口壮衆議院議員
「細川珠生のモーニングトーク」2018年11月10日放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth編集部(石田桃子)
【まとめ】
・米中間選挙の結果は、トランプ現象に対する世論のバランス感覚の表れ。
・日本は対米関係を大切にしながら、独立自尊の立場とるべき。
・中間選挙後、感情に訴え、健全な民主主義・資本主義と相容れないトランプ氏の姿勢は強調される。
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日本時間今月6日夜に行われた、アメリカ中間選挙。上院では与党・共和党が、下院では野党・民主党が過半数の議席を獲得する結果となった。今回は、衆議院議員・山口壮氏(衆議院北朝鮮拉致問題に関する特別委員長・自民党選挙対策副委員長)をゲストに迎え、今後のトランプ大統領の動き、日米関係の見通しについて、政治ジャーナリストの細川珠生が話を聞いた。
まず細川氏が、今回のアメリカ中間選挙の結果をどう見るか尋ねると、山口氏は「世論のバランス感覚が働いた結果であり、トランプ現象のブレーキになる」との見方を示した。そもそも、トランプ大統領が出現したのは、イラク・アフガン戦争を経て生まれたアメリカ国内の経済格差が、「チェンジ」を訴え期待を集めたオバマ大統領時代に、縮小するどころかさらに拡大し、その結果「忘れられた中間層」の支持がトランプに集まったためだ。
しかし、トランプ大統領は、LGBTやイスラム教徒などに対する差別的な発言で分断を増幅し、異質なものへの恐怖をあおるばかりで、格差の問題の根本的な解決には至っていない。「このような政治に対する『これでいいのか』という思いが反映された結果ではないか」と山口氏は述べた。
州知事選挙において、民主党から共和党に変わった州がないのに対し、反対に共和党から民主党に変わった州は多かったという結果についても、「世論のバランス感覚」の表れとして指摘した。ただし、上院では共和党議員から民主党議員に変わった選挙区があったことは、今回の中間選挙の結果が示すメッセージが単純なものではないことを表していると述べた。
細川氏が、山口氏のトランプ大統領に対する評価を聞くと、山口氏は「世界一の経済力・軍事力を持つアメリカは、民主主義・資本主義のリーダーであるべき」としたうえで、トランプ大統領の政治手法はそれに逆行するものだと指摘した。具体的に、
・感情論に訴えるばかりで正当性が疑わしい発言は健全な議会政治に対する不信感を抱かせる
・格差を是正し健全な資本主義を実現することをせず、民主主義が本来 包含すべき異質なもの、移民などに経済格差の責任を押し付けている。
との2点を挙げた。
▲写真 ©Japan In-depth編集部
次に細川氏は、10月25日に行われた安倍総理大臣の中国訪問と、それに対するアメリカの反応に触れ、日本が外交においてとるべき姿勢について、山口氏に質問した。山口氏は、「日本はアメリカとの関係を大切にしつつ独立自尊の姿勢を守るべき」であり、日本の中国との関係改善は当然の政策だとした。現在は、アメリカ自身がアメリカ中心の戦後秩序からの変容を迫られている状況であり、また、国家間のパワーバランスは、シーパワーを持つ国(アメリカ・イギリス)からランドパワーを持つ国(中国・ロシア)へ比重が移りつつあるという。山口氏は、日本は二つの勢力の接点にある国として、独自の戦略をしっかりと持つべきだ、との考えを示した。
さらに、山口氏は貿易交渉について触れ、「トランプの、感情に訴える不正確な主張を正すことがポイントだ」と主張した。山口氏は、自動車の輸入関税をめぐる発言を例として挙げた。トランプは、アメリカの自動車に対して日本が重い関税をかけていると述べたが、実際には日本がアメリカの自動車にかける関税は0%、それに対してアメリカは日本の自動車に2.5%の関税をかけている。さらに、日本の自動車工場がアメリカに多数建設され、大きな雇用を生み出している事実も無視されているという。
最後に細川氏が、中間選挙の結果がトランプ氏の政策に影響を与えるかどうか尋ねると、山口氏は「変わらない、むしろ強調される」との見方を示した。「中間選挙時の公約をそのまま実現することはないだろう」という見方は楽観的過ぎるとし、トランプ大統領の次にはさらにその特徴の強い大統領候補が現れる可能性も示唆して、日本が独立自尊の立場をとる重要性を改めて強調した。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2018年11月10日放送の要約です)
「細川珠生のモーニングトーク」
ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。