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.国際  投稿日:2019/2/18

仏著名記者、女性にネットいじめ


Ulala(ライター・ブロガー)

フランス Ulala の視点」

【まとめ】

・仏メディア男性記者、女性記者を狙ったいじめTweet投稿。

・男性記者ら、有名人への侮辱コメントが“クール”だと勘違い。

・ネット上のハラスメントにフランス政府が動き始めた。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=44182でお読み下さい。】

 

フランスメディアで働く若い男性記者がフェイスブックで非公開グループを作成・運営し、グループ内で嘲笑するターゲットを決め女性記者らにネットいじめをしていたことが明らかになり、現在フランスでは連日話題となっている。

「LOL同盟(Ligue du lol)」というフェイスブック上に作られた非公開グループは、ジャーナリストやコミュニケーション分野、広告業界で働く男性30人ほどのメンバーで構成されていた。ここでは、仕事の疲れを癒すために、「リンク、写真、人前ではできないジョーク」を公開する場所として利用されていたのだ。

しかし、いつの日からかこのグループは、気に入らない人物を侮辱することが中心になり、ネットで攻撃をする対象を決める場と変貌していく。その結果2013年頃まで、女性を主としたアカウントへ、匿名のアカウントによる攻撃の嵐が続いた。しかも、その女性たちがフェミニストであったり、太っていたり、肌の色が黒かったり、同性愛者であればあるほどその侮辱のコメントが多かったと言う。

このグループが作られた2009年と言えば、フランスではまだツイッターは一般的ではなかった。フェイスブックは多くの一般の人も利用していたが、フランスでのツイッターはSNSでも別枠な感じがあり、「ジャーナリストなど、メディアにかかわる人たちが主張する場」と言う認識を持っている人が多かったのだ。ツイッター利用者は、記者や、ブロガー、ユーチューバーなど、メディアに関係する人物が主であり、メディアの関係者も同業者の繋がりができることや、自己アピールのために積極的に発言していくことが大切だとされていた時代

フォワロー数も多いほどクールな記者であり、時代の先端を走っているような雰囲気があった。そんな中の一人が日刊紙リベラシオンの記者バンサン・グラッド(@vincentglad)氏だ。フェイスブックに「LOL同盟」を作った張本人でもある。

▲写真 バンサン・グラッド氏 出典:Twitter @vincentglad

本人が書いた謝罪文の中にも書かれているが、メディアに露出している人物を、ネット上で冗談でからかったりすることは問題ないと言う認識があったようだ。しかし、本人が冗談だと思っていても、侮辱の言葉を投げかけられる方はそう感じない

彼の場合、それはネット上だけに留まらなかった。現在、フランスのテレビフランス2で司会者としても活躍するダフネ・ビュルキ氏は、自分の番組の中で、元同僚のグラッド氏から嫌がらせや殺すぞと言う脅しを受けていたことを告白している。その上、「告訴をするなよ」と言う忠告を受け、その当時はどのように対処していいかもわからないまま、家族にも友達にも話さず耐えてきたが、この事件が明るみに出て、ようやく自分に何が起こったかを理解できたと言う。現在になり事件を振り返り「私は告訴するべきでした」と語っている

▲写真 ダフネ・ビュルキ氏 出典:Georges Biard

しかし、相手が誰なのかわかっていても対処まで至れないことも多いが、それが誰かもわからない匿名のアカウントとなれば、なおさら難しくなる。

科学ユーチューバーのフロランス・ポーセル氏(@FlorencePorcel)は、2010年から2013年にかけて、多くの中傷のコメントを受けていた。中にはアイスクリームを食べている画像を改変し、まるでポルノ写真を連想させる画像に加工されたものを流布されたこともある。仕事場に数名の男性が現れ、ネット上と同様の内容の中傷を直接浴び震えたこともある。

▲写真 フロランス・ポーセル氏 出典:Twitter @ Florence Porcel

ある時など、有名テレビ番組「Petit Journal」のプロデューサーと名乗る電話を受け質問に答えたが、その後、録音されたインタビューがインターネット上に投稿された。罠にかけるための偽のインタビューだったのだ。この件では3日間泣き続け、悪夢の日々を送り、未だに忘れられない。しかし相手は匿名で、どのように対処していいのかも分からなかったと言う。

偽のインタビューに対しては、この事件の発覚後、フランスメディアInrocksの編集者であるダビッド・ドゥセ氏(@Manciodayがそれを行ったことを認め、ツイッター上で謝罪した。しかしながらポーセル氏はそれだけでは納得が行かないと怒りは未だに消えない。

▲写真 ダビッド・ドゥセ氏 出典:Twitter @Mancioday

美容ブロガーのフロランス・デデュオル氏には、ふしだらな女、売春婦など、女性に対するあらゆる侮辱の言葉を、他の匿名のアカウントと共に、リベラシオンのWEBサービス長であるアレクサンドル・エルヴォ(@AlexHervaud)氏のアカウントから送られ続けていた。当時、エルヴォ氏は他のジャーナリストに謝罪するよう忠告されたのにもかかわらずもちろん謝罪していない。エルヴォ氏と言えば、2015年に現国民連合党首のマリーヌ・ル・ペン氏がツイートした画像に対して、男性性器を書いた画像を送り返した人物でもある。

https://twitter.com/MLP_officiel/status/575991416654032896

このように当時ネット上でいじめが行われた結果、仕事として必要なのにもかかわらずSNSから離れなければいけなくなった女性が居ただけではなく、仕事の退職を余儀なくされた女性、うつ病を発病した女性、そして自殺者した女性も居たと言う

この一連の事件内容を聞いたマルレーヌ・シアパ男女平等担当副大臣は、「まるで、学校の校庭で行われていたことをそのまま持ってきたようだ。」と述べていたが、確かに、同様の話をどこかで聞いたことがあると思ったら、それは11歳の娘の中学校で起こったことだと気が付いた。娘の中学校で一部の生徒がネット上で罠をしかけるなのイジメを行なっていたことが問題となっていたのだ。怒り心頭した中学の校長が「そんなことは絶対してはいけません!!」と、各クラスを周って怒鳴りまくっていたと聞いたばかりである。

▲写真 マルレーヌ・シアパ男女平等担当副大臣 出典:Wikimedia Commons; Nantilus

しかしこのように、ネット上の出来事が日常の生活となりつつある中学生たちは、すでに学校内でネットいじめを身近に経験しており、何が悪いことなのかを学生の間に学べていることはいいことなのかもしれない。「LOL同盟」に集っていた30代が中心の男性記者たちは、学生時代はそれほどネットも十分発達してなかったこともあるのか、ネット上で誰かを侮辱することが悪いことであるとは思ってはなかったようだ

ネット上も現実社会であることを認識できないまま、メディア露出している人間に侮辱のコメントを送ることで、他者からは“クール”な人物と思われようとしていたことが見てとれる

この事件を受け、フランス政府はインターネット上の憎悪と闘うための対策に取り組むことを決め、夏までに法案をまとめることとなった

しかしながら、今頃になり何年も昔の問題が出てきたことが不思議な気もするが、やはりそれは去年起こった#meetoo運動も関係しているのではないだろうか。クールなメック(仏:Mec=男性)が冗談であると言いつつ女性に対して侮辱することが普通だった時代に起こった出来事も、#meetoo運動を経て、純粋な女性差別によるハラスメントとして発言できるようになった。その上で、相手を特定できずどうすればよいかわからなかったネット上のハラスメントに対しても、問題提起することができるようになったのだ。

グラッド氏をはじめとする名前が出ているネットいじめの加害者たちは、職場から停職や解雇を言い渡された。クールな冗談と思ってやった行為でも、人を侮辱することは冗談では済まされないことを、30代にしてようやく学べたようだ。

トップ写真:パリで行われた#metooデモ(2018年3月8日) 出典:flickr Jeanne Menjoulet


この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

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