「県民投票で辺野古移設は変わらない」下地幹郎衆議院議員
【まとめ】
・県民投票の結果の見方は様々である。
・衆院沖縄3区補選では経済・社会両面でアピールすべき。
・安倍政権は沖縄の基地負担軽減に取り組んでいる。
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沖縄県では、米軍基地が普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)から名護市辺野古に移転し、新基地の建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票が今月24日行われた。県民投票の結果を受け、安倍編集長が日本維新の会で副代表・国会議員団選対本部長を務める下地幹郎衆議院議員(沖縄1区)に話を聞いた。
県民投票 当日有権者数 1,153,591人 投票率52.48%
「賛成」 114,933票(得票率19.1%)
「反対」 434,273票(得票率72.2%)
「どちらでもない」 52,682票(得票率8.8%)沖縄県知事選当日有権者数 1,146,815人 投票率63.24%
玉城デニー氏(無新) 39万6632票 同知事選で過去最多
■ 県民投票結果分析
まず、県民投票を行ったことについて下地氏は「全員が投票できる権利を得たというのはよかった。」としながらも、一方で「県民投票をやること自体は疑問がある。もともとやるべきではないという立場だった。」とした。
次に県民投票の結果について、「基準は、玉城デニー氏が(昨年9月30日の)沖縄県知事選で得た39万票、投票率63%。これに対し、県民投票の反対は43万票で39万票は超えたが、投票率は52%と12%少なかった。」と述べた。
また、下地氏は「衆院選、市長選等選挙の投票に行かない人は権利を執行していないので問題だが、県民投票は違う。私のように、県民投票そのものに意味がないと思う場合は、行って棄権したり、行かなかったりという意思の表し方がある。これは一つの権利だ。」と主張した。
そのうえで下地氏は「投票率が12%落ちて、55万人の県民が行かなかったというこの数字は重く受け止めるべきだ。賛成11万人、どちらでもない5万人、行かないを合わせて約70万票あるのに対し、43万票の反対票であるという事実は謙虚に受け止めなければいけない。」との考えを示した。
下地氏は「選挙は1票勝てば勝ち。しかし、県民投票は勝ち負けが決めにくい。色々な見方考え方が出てくるから。」と述べ、選挙と県民投票では結果の分析の仕方が異なることを改めて強調した。
安倍編集長は「県民投票には意味がないから行かない人という声は実際あるのか」と聞いた。下地氏は「いる。それが12%(投票率が)落ちている最大の原因だ。」と答えた。
■辺野古移設問題、今後の行方
安倍編集長は、「玉城県知事が3月1日に首相に結果を持っていく、トランプ大統領に会うという話もあったが、意味はあるのか。」と聞いた。
下地氏は「法的根拠がないというのがはっきりしていて、裁判で負けた後の県民投票だという問題点がある。(反対票は)有権者115万人のうちの38%、過半数は超えず、投票率も落ち、説得力のある数字ではなかったといえる。」と述べ、「(安倍首相に)持っていくときは色々な見方をされることを覚悟しなければならない」と指摘した。
安倍編集長は「菅官房長官も答弁で、これによって何かが変わるわけではないと言っている。辺野古の埋め立てを県が本当に反対しようと思えば法的に止めることができる。このまま粛々と進むと思うか。」と聞いた。
これに対し下地氏は「(県は)止める気がない。一番(止めるのに)効果がある条例を作ったのは、この5年近くの間、翁長県政時から1個だけだ。」と指摘し、「政治闘争、選挙闘争をずっと長くこのカードでやりたいとしか思えない」と答えた。
下地氏は「43万票が大きな根拠になるのだとしたらその次に何をすべきか。トランプ大統領に会って止めてくれと言うのではなく、堂々と私たちは条例を何十本と作りますということを宣言したほうがいい。それが政治の闘いだ。」と述べ、「結局は本当の根幹のところで本気度が見えない。」と強調した。
▲写真 ©Japan In-depth編集部
■沖縄衆院3区補選
4月21日に衆院沖縄3区の補選が行われる。自民党推薦の元沖縄・北方担当相の島尻安伊子氏、自由党推薦の元沖縄タイムス論説委員でフリージャーナリストの屋良朝博氏らが出馬する。
下地氏は「今の県民投票の流れからすると、島尻候補は厳しい選挙になるのは否めない。」とした一方で、「2つのことが理解されれば勝てると思う。1つは、安倍政権は、空中給油機やハリアーを岩国に移転したり、オスプレイの訓練を本土やグアムに移転させたりしている。私が国会議員になって以来、安倍政権ほど沖縄の基地負担が軽減した時はない。島尻さんはそこを言わなければいけない」と強調した。
また、「鹿児島県種子島の隣の馬毛島(まげじま)の活用等、現実的な負担軽減は与党しかできないことを彼女が訴えきれるかどうかだ。」と述べた。
そのうえでもう一つは「未来の沖縄。北部地域や沖縄全体の経済は良くなったが個人所得は伸びない、その歪みも直す。経済と社会政策を組み合わせる。」ことを訴えることが重要であるとの考えを示した。
安倍編集長はこれを受け「島尻候補を応援するのか」と聞いた。下地氏は「共産党と組んでいる人を応援するのは考えられない。今から党内手続き。一応(維新は)中央の政党は野党。知事選挙は推せるが、自民党与党の候補を野党の維新が推すというのは初めてのケース。そういうところも踏まえご相談しながら考える。」と答えた。
政府は、鹿児島県西之表市・馬毛島を米軍空母艦載機による陸上空母離着陸訓練(FCLP)の移転候補地としている。安倍編集長は「過去安倍政権がやってきたことを与党も説明していのではないか。」と述べた。
最後に、今後の辺野古移設の行方について改めて下地氏は「辺野古が嫌だというのなら、次のプランは国ではなく玉城デニー知事が提案するべき。辺野古よりも普天間の方が暫定的にでもいいと、それから新しい論理的なプランが出てくれば。」と述べ、玉城県知事が新たなプランを提示しない限り、基地の辺野古移設は変わらないとの見方を示した。
トップ写真:©Japan In-depth編集部
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。