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.政治  投稿日:2019/4/19

「閉じた経済」で地方再生を 落合貴之衆議院議員


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
 

【まとめ】

・少なくとも今現在は景気にブレーキがかかっている。

・中長期的な経済政策が必要。

・IT、エネルギーの地産地消、農業の改革を地方から進めていく。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て見ることができません。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=45276でお読み下さい。】

 

安倍政権が7年目に突入し、アベノミクスについて、専門家・エコノミスト、各メディアからその効果について様々な見方が出ている。景気の見通しと今後の経済対策について、立憲民主党落合貴之衆議院議員に話を聞いた。

 

■ アベノミクスの評価

まず、アベノミクスについて落合氏は「最終目的は達成されていない。」とした上で、「デフレから脱却し、三本の矢を打ってきたが、実質的な回復のためには個人の消費とか個人の家計の部分がうまく回っていかないと企業の投資も呼ばないため、一番重要な最終目標に行き着く前に失速する。色々お金をつぎ込んでしまったので軌道修正をしないと後でツケが回ってきてしまうのではないか、と危惧している。」と述べた。

また、「景気後退の局面に入ってきているのではないか」という見方については、「海外でブレーキがかかってきているのでその影響を受けているが、専門家の間では『今年の半ば以降には、またいい方向に進む』という意見と、『今後もブレーキがかかった状況が続く』という意見に二分されている。少なくとも今現在はブレーキがかかっていることは確かだ。」と述べ、現下の景気は足踏みしているとの認識を示した。

安倍編集長がオリンピック効果が剥落する可能性について問うと、落合氏はオリンピック効果を期待する一方で、人手不足解消策のタイミングには慎重であるべきだ、と述べた。その理由として、「経済の循環を短期的ではなく中長期的な視点で見ていく必要がある。非正規の外国人労働者を急いで集めても、不安定な雇用に国に帰ってしまう可能性もある。これから人口は下がって行くから、そういう意味で地道に経済成長のための政策を打っていく時期になっているのではないか。」と述べた。

また今後、中国に対する輸出に規制がかかるようなことがあれば、法制の見直しが必要だが、日本国内の労働人口が減少する中、自然な経済成長は見込めないので、中長期的な効果がある法制を打っていかねばならない、との考えを示した。

 

■ 子育て世代への支援を

またかつて民主党政権時に公約で掲げられた「分厚い中間層」についても触れた。「先進国各地でデモが起こっているが、トランプ政権の誕生も、イギリスのEU離脱も、マクロンに対するデモも”中間層の脱落”から始まっている。」と述べ、富の偏在が世界的に社会の不安定化を招いているとの考えを示した。

そうした「中間層の脱落」をどう食い止めるか、という問題に対して落合氏は、「教育費の負担軽減というのは重要だ。シングルマザーの平均年収が180万くらいで、3人に1人が離婚しているということは機会を均等化しないといけない。分配政策が今まで以上に重要になっている。子育て世帯を中心にすることが経済効果でも持続可能な日本の発展という面でも重要だ。」と述べ、子育て政策の充実が鍵だとした。

 

■ グローバル化と「閉じた経済」

グローバル化に対して落合氏は、先進国がグローバル化への対応に注力しすぎたと述べた上で、「フラットにしすぎると世界の賃金は一つのところに収れんしていくわけだから賃金水準がもともと高かったところは下がっていってしまう。水野和夫さんの言葉を借りると「閉じた経済」、すなわちある程度国境を作って再構築して行くことが重要だ。」と述べた。

また、トランプ政権については、社会の崩壊を食い止めるとか、人々の生活に焦点を当てるといった、その理念は支持しつつも、やり方に問題があると指摘する。「世界のブレーキの原因はトランプにある。マクロ経済の面で間違っている政策が多い。」と述べた。

その上で、「日本にはその選択肢がない。私は立憲民主は保守本流と言っているのであれば、そういう面で国民の生活を守るという面から、グローバル化一辺倒をやめたほうがいいと思う。」

 

■ 政権交代

立憲民主党は現野党党1党だ。政権交代についての意気込みを聞いた。

「私は初当選したとき、共産党以外の新人では35歳で自分が一番若かった。しかし、(最近は)大臣を経験していないと当選しない。中堅若手がどんどん減っていることが政権交代を遠ざける要因となっている。公募をしているが、リーマンショック以降優秀な人は民間に取られてしまった。我が党は女性優秀でやる気のある人たちを探していこうとしている。今は女性が政界に進出するいい機会なのではないか。」と述べ、立憲民主党として女性候補者の擁立に前向きな姿勢を示した。

▲©Japan In-depth編集部

 

■ 米中貿易摩擦

次に安倍編集長は日本の輸出に影響を与えている米中貿易摩擦の見通しについて聞いた。

「グローバル化への反発がトランプ政権にあり、グローバル化の象徴が昔の日本みたいに中国なのではないか。外交防衛の問題でいま日本と韓国が上手くいかないように、アメリカと中国は対立せざるを得ない。トランプ政権が続く限りは転換はない。それによって日本経済も影響を受けている。新規の設備投資を見送るというニュースも流れており、機械受注も下がってきている。それは中国の要因ではないだろうか。中国の生産と消費が減っているからだ。」

 

■ 消費税増税

オリンピック効果が剥落する中での消費税増税については、「財政健全というより持続可能な経済成長の方が重要である。消費税を全否定はしないが、タイミングはしっかり見ないといけない。今日本のGDPは6割が個人消費、2割が設備投資、1割が政府支出で、1割が海外の輸出。個人消費が伸びていない中、消費税を上げるというタイミングでは全くない。(増税緩和対策は)オリンピックまでという期間限定になっている。今の政策だけではだめだ。オリンピック後の経済をどうしていくか、ということを野党側が言わなければならない。」

具体的には「安倍政府の政府支出は公共投資だが、(建設業界は)人が足りない。そこにお金をいくらつぎ込んでも経済循環は生まれない。ITなど、今後につながって行く資産を作って行く必要がある。中長期的な視点でやって行くべきだ。」

「(IT・AI・医療への投資については)大企業向けの政策ばかりでバランスが悪い。エネルギー政策でも「閉じた経済」を作るためにはエネルギー自給率を上げる必要がある。それは日本全体もそうだし各地方もそう。日本は石油を買うのに20兆円くらい使っている。稼ぐために輸出しなければいけない。再生可能エネルギーでエネルギー自給率が上がればコストが下がるから地方の所得は上がり、農業林業に回すことができる。昔田中角栄元首相が目指していた日本中が快適な暮らしを出来るようにする、いわゆる『均衡ある国土の発展』というのは可能だと思うし、立憲はそれを経済成長戦略として示すべきだ。」だとした。

落合氏はエネルギーの地産地消を念頭に置きながら、「田舎の方が生活コストが高い。それはガソリンとか灯油とかの燃料費が高いからだ。そういうコストを下げて行けば、GDPには反映されないが、支出を減らすのでその分豊かになりQOLは上がる。」

 

■ 中長期的ビジョン

「地方では資産が残念ながら安くなってきている。いま地方の資産は買い時で、安いコストで広い土地が買える。東京にマンションを持ちながらもう一個(不動産を)買うことも可能で、そうやって経済を分散させることが重要だ。健康需要も伸びるのではないか。」

「今政権交代してもすぐに金融緩和を止めることはできない。金融は当面これ以上できることはないので、短期的な政策は安倍さんから引き継ぎながら、中長期的に違う経済の形に持って行くということが必要だ。」

「人口は減少していくが、現在の日本の借金を返していくためにも、IT分野や、地産地消のエネルギーと農業を進め、新しい日本人の生活を見出しながら各政策を打っていくことが大切だ。」

 

【編集後記】

一極集中の経済から、エネルギーの地産地消をベースにした「閉じた経済」を地方から進める、という発想には共感した。実際、愛知県豊田市など、新たな経済循環や人の交流を生み出そうとして様々な取り組みを始めており(参考:“つながる つくる 暮らし楽しむまち・とよた” の実現  豊田市「SDGs未来都市」計画)、多くの自治体のロールモデルになりうると感じる。

一方で、国主導の公共投資に頼りがちな自治体側の問題もある。おりしも、今統一地方選の真っただ中だ。耳ざわりのいい目の前の政策の連呼が町を埋め尽くしているが、こうした中長期的な視点こそ政治家に求められている。

 

トップ写真:©Japan In-depth編集部


この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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